東京のすみっこより愛をこめて。fummyです😊💡
英語多読100万語を目標に、洋書を読み進めています。
今回取り上げるのは、Macmillan Readers(マクミランリーダーズ) レベル2(Beginner)の、ジェーン・オースティン作『ノーサンガー・アビー(Northanger Abbey)』です!
19世紀初頭のイギリスの、田舎育ちの純粋無垢な女の子キャサリンが、温泉リゾート地で素敵な男性や華やかな女性たちに出会い、結婚や財産をめぐる男女の思惑に揉まれながら成長していく物語です。
・・・なのですが。
人物の心理描写が端折られすぎていて理解できなかった・・・
ので、原作(邦訳版)を読んで補完してしまいました。
確かにGraded Readers(GR版)なので、ある程度は描写が省略されていても仕方がないことは、もちろん重々承知しています。
それでも、わたしもここまでずっとマクミランリーダーズで英語多読をしてきて、『ノーサンガー・アビー』で、ちょうどシリーズの50冊目を読破したことになりますが、ここまで登場人物の気持ちがわからなかった本は今までありません。たぶん、マクミランリーダーズ版だけ読んだ方は、読み終わったあと、「謎」が残りすぎて、クエスチョンマークが頭の周りを舞うと思います(笑)。
しかも、この『ノーサンガー・アビー』なんですが、
原作がめちゃくちゃ面白いんですよね。
本当に、200年前の作品とは思えないくらいに面白いんです。だから余計に残念で。たまらなくなって、思わず、原作を読んだ上で、登場人物たちの心理について、割と、いえ、かなりガチで解説を書きました。
ですので本記事では、マクミランリーダーズ版だけだと理解しづらい部分について、
シーンの英文を引用して翻訳をつけ、
さらに原作を引用して補いながら、
解説しています!
この記事を読んで、『ノーサンガー・アビー』の登場人物たちが、「あの時こう考えてこういう意図で行動してたんだ!」と理解して、スッキリしていただければ嬉しいです!
というわけで、原作を含めたストーリーのネタバレをしていますので、未読の方はご注意ください!
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ジェーン・オースティン(Jane Austen)とは
ジェーン・オースティンの肖像画(画像はWikipediaより)
『ノーサンガー・アビー(Northanger Abbey)』の作者のジェーン・オースティン(1775-1817)は、イギリス南部のハンプシャー、スティーブントン出身の小説家です。
代表作は、『分別と多感(Sense and Sensibility)』、『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』など。いずれも18世紀から19世紀イギリスの田舎の中流社会を舞台として、当時の名家の娘と紳士たちの私生活、恋愛模様、結婚事情などが描かれています。
オースティンは牧師の家に生まれ、姉のカサンドラとともに、当時の女性としてはとても高い教育を受けています。英文学や英語学、フランス語、イタリア語を学び、詩や小説に慣れ親しみました。オースティン本人が『ノーサンガー・アビー』の作中で語っている通り、彼女の小説では、彼女の知性と教養がいかんなく、それでいて軽快に表現されています。
つまり小説とは、偉大な知性が示された作品であり、人間性に関する完璧な知識と、さまざまな人間性に関する適切な描写と、はつらつとした機知とユーモアが、選び抜かれた言葉によって世に伝えられた作品なのである。
ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、p.47。
またオースティンは、1801年から著名な保養地であったバース(Bath)に移り住み、妹とともに舞踏会や観劇を楽しみました。『ノーサンガー・アビー』は、まさにこのバースが舞台。オースティンの作品は、彼女の生きた軌跡そのものであると言えるでしょう。
彼女の作品は同年代はもちろん、時代を超えて後世の作家からも高く評価されていて、近代イギリス長編小説の頂点とみなされています。ちなみに今はイギリスの10ポンド札にオースティンの肖像が印刷されているみたいですね。(欲しい・・・)
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『ノーサンガー・アビー(Northanger Abbey)』について
今回取り上げる『ノーサンガー・アビー』は、以下の本です。
原書ではなく、マクミランリーダーズという、英語学習者用に簡単な英語で書かれた洋書のシリーズの一つであることをご了承ください。
冒頭で、この作品が「GR版であるがゆえに内容が端折られていて理解しづらい」ということを述べましたが、より正確にいうと、以下のような理由で、人々の「本音」が読み取りづらいのが、マクミランリーダーズ版の本作を分かりづらくしている大きな原因になっていると感じました。
- 田舎の名家を中心とする価値観や、個々の登場人物が語る「本音」と「建前」のうち、特に「本音」部分の描写が端折られている。そのため、とりわけ物語の最後のあたりで何人かの人物の思惑が理解しづらく、展開も駆け足でわかりづらくなってしまった。
- 主人公(ヒロイン)がとても純粋で善良な子であり、彼女視点で物語が描かれるので、つい登場人物たちの表面的な発言を真に受けてしまう。そのため、人々の「本音」がより読み取りづらくなっている。(原作も同様の傾向がありますが、ヒロインの心が成長するにつれ、みんなの思惑がわかるようになります。笑)
そんなわけで、本記事では、あらすじ、マクミランリーダーズ版からのシーンの引用・翻訳、そして原作(邦訳版)からの引用を書きながら、人々の「本音」を中心に、わかりにくかった部分を補完していきますね。
原作(邦訳版)は、以下の本を参考にしています。
ちなみに、『Northanger Abbey』は、マクミランリーダーズのレベル2(Beginner)の本で、「MMR2+」に当たります。「MMR2+」の詳しい難易度が気になる方は、以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください!
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『ノーサンガー・アビー(Northanger Abbey)』のあらすじ
舞台は1802年のイギリスの南西部の保養地バース(Bath)です。
キャサリン・モーランド(Catherine Morland)は17歳。田舎育ちの純粋な女の子です。素敵な出会いを夢見て、隣人のアレン夫妻(Mr and Mrs Allen)と、温泉リゾート地であるバースを訪れ、数週間滞在することになりました。キャサリンはそこでイザベラ・ソープ(Isabella Thorpe)という華やかで美しい女の子と友達になり、彼女とショッピングや観劇、そして舞踏会を楽しみます。
バースでキャサリンと知り合ったイザベラでしたが、偶然にもイザベラの兄のジョン・ソープ(John Thorpe)は、キャサリンの兄のジェイムズ・モーランド(James Morland)と同じオックスフォード大学に通う友人同士でした。さらには兄たちもバースに遊びに来ていたことがわかり、キャサリン、ジェイムズ、イザベラ、ジョンは、4人で行動を共にするようになります。
そのうちに、イザベラとジェイムズ(キャサリンの兄)はお互いに愛し合うようになり、ついには婚約します。ジョン(イザベラの兄)もキャサリンに惹かれ、しつこくキャサリンに迫りますが、キャサリンはジョンのことは好きになれません。
キャサリンは、バース滞在中に出会った25歳ほどの牧師の男性ヘンリー・ティルニー(Henry Tilney)に恋をしていました。そして、ヘンリーの妹のエレノア・ティルニー(Eleanor Tilney)と友達になると、キャサリンは次第にヘンリーやエレノアと行動を共にするようになります。
そんなある日、キャサリンは、ヘンリー、エレノア、そして二人の父親のティルニー将軍(General Tilney)から、ヘンリーの実家であるノーサンガー・アビーに招待されました。
ティルニー一家の歓待を受け、楽しく過ごすキャサリンでしたが、ある時突然ティルニー将軍の怒りを買い、ノーサンガー・アビーを追い出されて、強制的に自身の実家であるフラートン(Fullerton)に送還されてしまいます。
ティルニー将軍の機嫌を損ねた理由に、何も心当たりがないキャサリン。泣いて暮らしていたところに、なんとヘンリーがキャサリンを訪ねてきます。ヘンリーは事の真相を話すとともに、キャサリンに結婚を申し込むのでした。
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前提:ティルニー家に「善い人」バイアスがかかってしまう罠
わたしは、『ノーサンガー・アビー』で人々の「本音」がわかりにくいと感じた原因の前提として、「ティルニー家に『善い人』バイアスがかかってしまう罠」があると考えています。
『ノーサンガー・アビー』には、キャサリンの友達のイザベラとジェイムズの婚約関係を脅かす存在として、ヘンリーの兄のフレデリック・ティルニー大尉(Captain Frederick Tilney)が登場します。フレデリックはイギリス軍の将校で、背が高く非常にハンサムなのですが、イザベラがジェイムズと婚約中と知っているにも関わらず声をかけたり、ダンスをしたり、デートをしたりします。
そんなフレデリックの行動を、純粋なキャサリンは理解できずに困惑します。
そして、キャサリンに感情移入している読者も困惑します(笑)。
冷静に振り返ってみると、ただ単に「フレデリックはチャラい人」だというだけなのですが、なぜキャサリンも読者も困惑してしまうのでしょうか。この困惑の原因は、ティルニー家に「善い人」バイアスがかかってしまっているからです。
ティルニー家の「善い人」バイアスの要因(1):キャサリン視点
『ノーサンガー・アビー』では、キャサリンから見ると、ヘンリー、エレノア、そして二人の父のティルニー将軍は、いつもキャサリンを温かく歓迎してくれて、とても感じがよく、人格者のように描かれています。
この「キャサリン視点」というのが、ティルニー家がどんどん「善い人」に見える、大きな原因になっています。
バースではキャサリンが彼らの家に突然押しかけても喜んで迎え入れてくれるし、バース周辺の散策やディナーにも誘ってくれるし、キャサリンと過ごすことを心から喜んでくれている様子です。ついには、ティルニー家の実家である、ノーサンガー・アビーにも誘ってくれます。
‘Catherine,’ Eleanor said. ‘My father — all of us — want you to come to Northanger Abbey. Will you come?‘
Northanger Abbey! With Henry and Eleanor!
‘Thank you!’ Catherine said happily. ‘You are very kind. I will write to my parents immediately.’*日本語訳(拙訳)*
「キャサリン」と、エレノアは言った。「お父様 — いいえ、私たちみんな — あなたがノーサンガー・アビーに来てくれたらいいなって思っているのよ。遊びに来ない?」
ノーサンガー・アビー! ヘンリーとエレノアと一緒に!
「ありがとう!」と、キャサリンは喜んで言った。「あなた方は、本当に善い方たちね。お父様とお母様に、すぐに手紙で知らせるわ」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.37.
こうやって、いつも両手を広げて温かく迎え入れてくれると、なんとなく彼らの属するティルニー家全体が徳の高い家庭のような錯覚を起こしてしまうんですよね(笑)。なので、同じティルニー家であるフレデリック大尉にも、どことなく「善い人」バイアスが、かかってしまいます。
実際、原作ではキャサリンも次のように心中をつづっています。
(引用文の「彼女」=「キャサリン」です)
そして彼女は、ティルニー大尉のことも大いに心配した。彼のうぬぼれの強そうな顔は好きになれないが、ヘンリー・ティルニーのお兄さまなのでどうしても好意的になってしまうのだ。ティルニー大尉が失恋の苦しみ味わうだろうと思うと、心から同情せずにはいられなかった。このあいだポンプ・ルームで、恋のたわむれのようなイザベラと大尉の会話を聞いてしまったが、あのときの大尉の振る舞いを見ると、彼がイザベラとジェイムズの婚約を知っているとは思えない。どう考えても、知らないとしか思えない。
ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、p.224。
キャサリンは心やさしい女の子ですね。そして、キャサリンに感情移入してしまっている読者もたぶん、心やさしくて純粋なんだと思います(笑)。
でも、ティルニー家であろうがなかろうが、結局はみんな自分の利益や思惑のために行動しています。特にフレデリックはイザベラのことを、本当に「遊び相手」くらいにしか思っていないことを、最終的にイザベラもキャサリンも理解することになります。
ティルニー家の「善い人」バイアスの要因(2):ソープ家との対比
ティルニー家の「善い人」バイアスを強めるもう一つの要因が、ソープ家との対比です。
この物語では、キャサリンが2つの家庭の兄妹と仲良くなります。ジョンとイザベラのいるソープ家と、ヘンリーとエレノアのいるティルニー家です。
ソープ家の方々の印象が悪いため、相対的にティルニー家が善良に見えるという現象が起こっています(笑)。各家の人たちの特徴をまとめるとこんな感じです。
- ジョン(兄) :小太りで容姿は平凡。キャサリンの兄の友人でオックスフォード大学在籍。キャサリンを自分のものにするため、彼女に嘘をついたり、強引に誘ったりする。
- イザベラ(妹):21歳の美しい女性。長身でお金持ちでハンサムな男性と結婚することが夢。キャサリンの兄のジェイムズと婚約しながらもフレデリック大尉と浮気する。
- ヘンリー(兄):25歳程度の長身でハンサム、知的で話好きな青年。ウッドストンで牧師をしている。キャサリンと恋に落ちる。
- エレノア(妹):22歳の美しい女性。物静かで控えめ。ノーサンガー・アビーで一人で過ごすことが多いため、同じくらいの年齢のキャサリンと仲良くなれて嬉しい。
このように対比してしまうと、ソープ家の方が我が強くて自分の欲望に忠実に生きているような印象を受け、ティルニー家の方が控えめで誠実で心が美しい印象を受けます。
「ソープ家が自分本位に見えるから、ティルニー家が徳の高い一家のように見える」
という原理です。実際は、フレデリック・ティルニー大尉(長男)がチャラいのはすでに述べましたが、ティルニー将軍(父)も本心を隠して相当調子のいいことを言います。でも、それがわかるのは物語の終盤なので、結局はソープ家の悪い印象の方がずっと強く読者に残ることになります。
ちなみに、イザベラの「長身でお金持ちでハンサムな男性と結婚することが夢」というのは、一見わがままなようにも見えますが、キャサリンもエレノアも心の中ではそう思っているので、別に悪いことではありません(笑)。みんな普通にミーハーです(笑)。
- 『ノーサンガー・アビー』の人々の「本音」が見えづらい原因の前提として、ティルニー家に「善い人」バイアスがかかっていることが挙げられる。
- キャサリンと親交の深い、ヘンリー、エレノア、ティルニー将軍は、常にキャサリンに対して親切で、いつも歓迎してくれる。そのため、キャサリン視点で語られる本作では、ティルニー家に「善い人」バイアスがかかりやすい。
- キャサリンと仲の良いソープ家の印象が良くないため、相対的にティルニー家がより善良に見える現象が起こる。
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『ノーサンガー・アビー』でわかりづらかった3つのポイント
無意識のうちに、この物語にティルニー家の「善い人」バイアスが横たわっていることを頭の片隅に置いておきながら、『ノーサンガー・アビー』において「理解しづらいポイント」について解説していきます。
わたしが『ノーサンガー・アビー』を読んでいて、初回の読書で理解できなかったのは以下の3点です。
- 婚約者がいるのを知っていてイザベラを誘うフレデリック・ティルニー大尉の真意
- 婚約しながらもフレデリックの誘いに乗るイザベラの真意
- 最初は優しかったのに、終盤でいきなり手のひらを返したティルニー将軍の真意
この3点については、わたしが初めてマクミランリーダーズ版を読み終えたときには、本気で頭の周りにクエスチョンマークが飛んでいましたが(笑)、原作を読んでやっとそれが解消されましたので、一つずつ見ていきたいと思います!
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ポイント①:フレデリック・ティルニー大尉の真意「完全に遊び」
ヘンリー、そしてエレノアの兄であるフレデリック・ティルニー大尉に関していえば、ティルニー家の「善い人」バイアスさえはずしてしまえば、何も悩むことはありません。最初から最後まで、イザベラのことは、「遊び相手」としか思っていません。
イザベラがフレデリックの誘いに応じた最初のきっかけは、ジェイムズがバースを離れていてダンスのパートナーがいなかったためでしたが、ジェイムズがバースに戻った後も、イザベラはいつもフレデリックと一緒にいます。見るに見兼ねたキャサリンが、フレデリックを止めるよう、ヘンリーにお願いをしますが、ヘンリーはしれっとこう返します。
‘Please tell your brother about Isabella and James,’ she said. ‘They are going to get married.’
‘Frederick knows about that,‘ Henry replied. ‘I told him myself.’
‘He must leave Bath,’ Catherine said. ‘He must not speak to Isabella. He is making James, my brother, very unhappy.’
…(An omission)…
‘My brother will soon leave Bath,‘ said Henry. ‘He will soon forget Isabella. James will be happy again.’*日本語訳(拙訳)*
「あなたのお兄様に、イザベラとジェイムズのことを話してくださらないかしら」と、キャサリンは言った。「あの子たちは結婚する予定なのよ」
「それなら、フレデリックは知っているよ」と、ヘンリーは答えた。「僕が伝えたからね」
「彼は、バースから出ていかないといけないわ」と、キャサリンは言った。「イザベラに話しかけてはダメなのよ。彼はジェイムズを、私のお兄様を悲しませているわ」
…(略)…
「兄さんはもうじきバースを出ていくよ」と、ヘンリーは言った。「そしてすぐにイザベラのことは忘れてしまうさ。ジェイムズは、また元気になるよ」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.40.
ヘンリーは「いつものこと」とばかりに、キャサリンにこう言います。
ヘンリーの言う通りで、フレデリックはこういうチャラい男性なんですよ。「ヘンリーやエレノアのお兄さんだし、まさか本当に悪い人ではないだろう。もしかして、婚約者がいると知っててもイザベラにアプローチするほど、イザベラに対して本気なんじゃ」と、一瞬でも考えたわたしが愚かでした(笑)。実際、後にヘンリーが言ったとおりになり、イザベラはキャサリンに泣きつくことになります。
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ポイント②:イザベラの真意「遊びだけれど、あわよくばとも思っている」
イザベラ自身も、フレデリックとの関係は「遊び」と認識していますが、「あわよくば乗り換えよう」と考えています。
正確にいうと、フレデリックではなくても「背が高くてハンサムで知的でよりお金持ちの男性がいたら乗り換えよう」というのが彼女の真意のようです。
イザベラの真意がわかりづらい要因には、以下の3つが挙げられると感じました。
要因(1)ジェイムズとの婚約当初は心から喜んでいる様子だった。
フレデリックと浮気をするイザベラの真意がわかりづらかったのは、イザベラがジェイムズと婚約したばかりの頃は、イザベラが心から幸せそうだからなんですよね。この物語はキャサリン視点で、読者もキャサリンに感情移入しているので、兄と友達が幸せになるなんて、読者も自分のことのように嬉しいわけです(笑)。
‘Your dear, dear brother!’ Isabella said. ‘Oh, I am very excited! What will your parents say? Will they like me?’
‘My dear Isabella!’ Catherine said. ‘What are you saying? Are you in love with James?‘
‘I am! I am!‘ said Isabella. ‘And James is in love with me. He told me yesterday. I am very, very happy! I have always loved him! He is handsome and clever! Why did he choose me? I cannot understand it!‘*日本語訳(拙訳)*
「あなたの素敵な、素敵なお兄様!」と、イザベラは言った。「ああもう、大興奮だわ!あなたのご両親はなんておっしゃるかしら?私のことを気に入ってくださるかしら?」
「イザベラったら!」と、キャサリンは言った。「何を言っているの?ジェイムズに恋してしまったの?」
「そう!そうなのよ!」と、イザベラは言った。「そしてジェイムズも私に恋してるのよ。昨日彼が告白してくれたの。私すごく、すごく幸せよ!だって私、ずっと彼のこと大好きだったんですもの!彼はハンサムだし頭がいいわ!どうして私のこと選んでくださったのかしら?見当もつかないわ!」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.31.
さらにその後、婚約者であるジェイムズがバースをいったん離れてしまいます。そんな中で、いつものメンバーで舞踏会に行くのですが、イザベラは「私は踊らないわ!」と、いじらしい面を見せます。
‘I will not dance!’ Isabella said. ‘James is not here. I will not dance with anybody else. I shall sit and think about my dear James.‘
*日本語訳(拙訳)*
「私は踊らないわ!」と、イザベラは言った。「ジェイムズがここにいないんですもの。私は他の方とは踊らないわ。私は座って、大好きなジェイムズのことを考えるの」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.35.
こんな健気で一途なイザベラに癒され、「イザベラったらかわいいな〜」とニコニコしながらページをめくると、次のページであっさりフレデリックと踊ってしまうので、キャサリン(と読者)は度肝を抜かれます(笑)。
それにも一応、彼女なりの理由があるのですが、ちょっと描写が足りないんですよね。というのが、次のお話です。
要因(2)「ジェイムズがお金持ちでないこと」に不満を抱く描写が無い。
マクミランリーダーズ版には描写は一切無いのですが、
どうやらイザベラは、
ジェイムズが思ったよりもお金持ちではないことが不満
のようなのです。
以下は、ジェイムズが父のモーランド氏から受け継ぐ財産(土地や聖職禄)の金額が、手紙で伝えられたときのイザベラとその母ソープ夫人の反応です。長いのですが、おもしろいので、一通り引用します。
「モーランド氏はほんとに気前がおよろしいわ」とやさしいソープ夫人が、心配そうに娘のイザベラを見ながら言った。「私も同じくらいのことができたらいいんですけどね。モーランド氏にこれ以上のことを期待するのは無理ですよ。もっとお出しになれるとわかれば、きっとそうしてくださいますよ。とても心のやさしいお方にちがいないんですもの。新婚生活を始めるには、四百ポンドでは少なすぎるかもしれないけど、ね、イザベラ、あなたの望みはとても控えめでしょ? お金なんてそんなに必要ないんじゃない?」
「もっとお金があればいいって私が思うのは、自分のためじゃないのよ」とイザベラは言った。「いとしいジェイムズが私のために苦労すると思うと耐えられないの。生活必需品を買うのがやっとの収入で、彼が結婚生活を始めると思うと、とても耐えられないの。私のことはどうでもいいの。私は自分のことなんて考えていないわ」
「それはよくわかっていますよ。だからこそ、おまえは誰からも愛されるんですよ。おまえを知っている人は、みなさんおまえを愛してくださるわ。ね、イザベラ、若い女性で、おまえほど誰からも愛される人はいませんよ。きっとモーランド氏もおまえに会えば・・・・・・でも、こんな話をしてキャサリンさんを困らせてはいけないわね。モーランド氏はほんとに気前がおよろしいわ。とても立派な方だと伺っています。ね、イザベラ、よけいなことを考えてはいけないわ。おまえにちゃんとした財産があれば、モーランド氏はもっと奮発してくれたかもしれないなんて、そんなことを考えてはいけないわ。あの方はほんとに気前のいいお方にちがいないんですもの」
「私ほどモーランド氏をよく思っている人はいないわ」とイザベラは言った。「でも、誰だって欠点はあるし、誰だって、自分のお金を好きなように使う権利はあるわ」
キャサリンは、このあてこすりに傷ついて、思わずこう言った。
「でも私の父は、ほんとにできるだけのことを約束してくれたと思うわ」
イザベラははっと我に返ったように言った。
「もちろんよ、キャサリン、その点については疑問の余地はないわ。ね、あなたならわかってくれるでしょ? 私はもっと少ない収入でも満足よ。私がいま元気がないのは、収入が少ないからではないの。私はお金なんて嫌いよ。年収がたったの五十ポンドでも、すぐに結婚できれば私は満足よ。ね、キャサリン、私の気持ちがわかったでしょ? 問題はそこなのよ。ジェイムズが聖職禄を得るまで、二年半も待たなくてはならないということが問題なのよ」ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、pp.203-204。
よく言う。(笑)
原作ではこれだけ「イザベラのお金に対する不満」が明確に描かれているのにも関わらず、マクミランリーダーズ版では、イザベラがジェイムズに対して金銭面で不満を漏らすシーンはありません。これでは流石にわかりませんよね。
キャサリンの家(モーランド家)は、決して貧しくはありませんが、裕福ではない牧師の家庭です。背が高くてハンサムで頭もいい(オックスフォード大学在籍)、完璧なように見えたジェイムズも、イザベラにとってはもう一つ物足りなかったのです。
ちなみにマクミランリーダーズ版では、「ジェイムズと結婚するまでに2年待たなければならないこと」を、イザベラが嘆くシーンがあります。
‘Another letter from James arrived today,’ Isabella said. ‘We will get married, but we must wait for two years. After two years, James will leave Oxford. He will have a little money then.‘ Isabella spoke sadly.
*日本語訳(拙訳)*
「ジェイムズから今日新しく手紙が届いたの」と、イザベラが言った。「私たちは結婚するのに、2年待たなければならないそうなのよ。2年経ったら、ジェイムズがオックスフォード大学を卒業して、少し収入を得られるようになるわ」と、イザベラは悲しそうに言った。ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.35.
そしてしばらくした後、キャサリンは、「イザベラとの婚約を破棄した」旨ジェイムズから手紙で知らせを受けることになります。原因はイザベラとフレデリックの浮気ですが、「イザベラが2年も待てないと言っている」ことは、一応手紙でも触れられています。
I left Isabella in Bath yesterday. I will never see her again. She will not wait for me. She will not wait for two years. She is going to marry Captain Tilney.
*日本語訳(拙訳)*
昨日、イザベラをバースに残してきたよ。もう二度と彼女に会うつもりはない。イザベラは僕を待ってはくれない。二年も待ってはくれない。彼女は、ティルニー大尉と結婚するつもりだ。ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.50.
イザベラがジェイムズに満足できない理由は、本当は「収入が少ないこと」であって、「二年待たなければならないこと」は建前だというのは、原作を読むと明らかです。そもそも、お金持ちだったらすぐに結婚してしまいますしね。
しかし、マクミランリーダーズ版では、イザベラのお金に関する不満、すなわち本音部分は全て省かれてしまっています。
そのため、「結婚まで二年待たなくてはならない」という建前部分だけ残ってしまいました。もしかしたら、物語を簡潔に描写するための工夫なのかもしれませんが、マクミランリーダーズ版でも、イザベラが金銭面に不満があることをもっと丁寧に描写して、物語の中で強調してくれた方が、彼女の行動の理由(本音)を理解しやすかったのに・・・と思わずにはいられません。人間に本音と建前があることを、純粋なキャサリンが学んでいくというのが、『ノーサンガー・アビー』の見どころの一つなのですから。
要因(3)ジェイムズとの復縁を希望する手紙が本気のようにみえる。
ジェイムズと破局したイザベラなのですが、その後フレデリックにあっさり振られたため、都合よくジェイムズと寄りを戻そうとします。イザベラはキャサリンに手紙を書き、ジェイムズに自分のところに戻るように言って欲しい、とお願いをします。
My family will leave Bath tomorrow. I hate this place. All my friend have left. James is in Oxford, but he has not written to me. Why not? I will never love anybody else.
Catherine, please write to James. Did I make him unhappy? I do not know. Will he write to me? Then everything will be well again.
Another man has left Bath too — Captain Tilney. I hate him. I often saw him, but I never liked him. I only like your dear brother.
…(An omission)…
Please, please write to your brother. And write to me too.*日本語訳(拙訳)*
明日、私たちは一家そろって、バースを出発する予定なの。バースなんて大嫌い。私のお友達はみんな、とっくに帰ってしまったわ。ジェイムズはオックスフォードにいるけれど、一度も私に手紙をくださらなかったの。どうして? 私は彼以外に愛せる人なんていないのに。
キャサリン、ジェイムズに手紙を書いてくださらないかしら。私はジェイムズを悲しませてしまったの? わからないのよ。彼は私に手紙をくださるかしら? そうすればまた、何もかもがうまくいくわ。
あの方 — ティルニー大尉 — も、バースから出て行ったわ。あんな男、大嫌い。彼とはよく会っていたけれど、彼のことを好きだと思ったことは一度もないわ。私が好きなのは、あなたの大切なお兄様だけ。
…(略)…
どうか、お願いよ、お兄様に手紙を書いてちょうだい。そして私にも手紙をください。ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.54.
原作を読んだ上で改めて読むと「ずいぶん身勝手な手紙だな」と思うのですが、初めてこのシーンを読んだときは、まだ「イザベラがジェイムズとの婚約に喜ぶ姿」が記憶に新しかったんですよね。それもあって、「フレデリックに捨てられたことで、イザベラはやっとジェイムズへの愛に気づいたのかな?よかった!」とか、わたしも考えちゃったんですよね。頭がお花畑ですね(笑)。
イザベラの真意はそうではありません。イザベラは結局お金持ちの男性がいいので、ジェイムズとまた婚約したとしても、2年も待てないし、他の男性と遊んだり、あわよくば結婚してしまうことも予想されます。ヘンリーはイザベラの真意を見抜いていて、キャサリンにイザベラとはもう関わらないよう助言します。
Catherine showed the letter to Elenor and Henry.
‘I understand,’ Catherine said. ‘Captain Tilney did not love Isabella. She will be sad.’
‘No, Miss Morland,’ Henry said. ‘Isabella will not be sad. She did not love my brother, Frederick. They were both wrong. Write to your brother, James. Forget Isabella Thorpe.‘*日本語訳(拙訳)*
キャサリンは手紙をエレノアとヘンリーに見せた。
「わかったわ」と、キャサリンは言った。「ティルニー大尉は、イザベラのことを愛してはいなかったのね。イザベラが悲しむわ」
「そうじゃないよ、モーランドお嬢さん」と、ヘンリーは言った。「イザベラは悲しまないさ。彼女は僕の兄さんを、フレデリックを愛してなんかいなかったんだから。二人ともたちが悪いんだよ。お兄さんには、ジェイムズには手紙を書きなさい。イザベラ・ソープのことは忘れてしまいなさい。」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.55.
ヘンリーは最初からイザベラという女性のことをよく理解していて、フレデリックとイザベラが初めて出会ったときも、「ソープお嬢さんはフレデリックと踊るね(Miss Thorpe will dance with Frederick.)(p.36)」と予言しています。キャサリンが「イザベラはジェイムズ以外の男性とは踊らないって言ってたわ!」と否定しても、「で、君はそれを信じたわけだ!(And you believed her!)(p.36)」と、おちょくります。オトナですね(笑)。
ちなみに、すでに見ていただいたように、マクミランリーダーズ版のキャサリンは、イザベラからの手紙を受け取ったときに「ティルニー大尉は、イザベラのことを愛してはいなかったのね。イザベラが悲しむわ」というほど、まだイザベラに同情的です。
しかし、原作のキャサリンは、実はこの手紙を受け取る時点までにかなり精神的な成長を遂げています。世間知らずで純朴な田舎娘ではなくなっています。そのため、ヘンリーに言われるまでもなく、イザベラの本性に自ら気づき、腹を立てます。
「イザベラのことはこれでおしまい! 彼女とのおつきあいもこれでおしまい! 彼女は私のことを馬鹿だと思っているのね。そうでなければ、こんな手紙を書けるはずがないわ。でも、この手紙のおかげで、私がどう思われているかわかったし、イザベラがどういう人間かもわかってよかったわ。何もかもはっきりしたわ。イザベラはうぬぼれの強い浮気女なのね。そしてその手練手管がうまくいかなかったのね。彼女は私の兄のことも私のことも、なんとも思っていなかったのね。あんな人と知り合わなければよかったわ」
「すぐにそうなりますよ。知り合わなかったと同じことにね」とヘンリーは言った。
「でも、ひとつだけわからないことがあるわ」とキャサリンは言った。「イザベラがティルニー大尉に下心を抱いていて、それがうまくいかなかったことはわかります。でも、ティルニー大尉はどういうつもりだったのか、それが私には理解できません。大尉はなぜあんなにイザベラに言い寄って、私の兄とイザベラの仲を引き裂くような真似をしたんですか? そしてなぜさっさと逃げてしまったんですか?」
「兄の気持ちについては、はっきりとしたことは言えません。イザベラ・ソープと同様、兄もうぬぼれの強い浮気男なんでしょう。ふたりの違いは、兄のほうが頭がしっかりしていて、自分のうぬぼれに兄元をすくわれないということです。でも、兄のしたことは間違っていると、あなたが思っているなら、ぼくたちはその動機を詮索しないほうがいいですね」
「それじゃあなたは、大尉はイザベラのことをなんとも思っていなかったとお思いなんですか?」
「ええ、そうだと思います」
「恋のたわむれのために、イザベラにそう思わせたんですか?」
ヘンリーは同意のしるしにうなずいた。
「それじゃ私は、ティルニー大尉を好きにはなれません。イザベラは失う心など持っていないと思うので、たいした被害はありませんが、もしイザベラが本気で大尉を好きになっていたら、どうするんですか?」
「それにはまず、イザベラ・ソープは失う心を持っている、と考えなくてはなりません。つまり、イザベラ・ソープとはまったく違うタイプの女性だということです。そしてまったく違うタイプの女性なら、当然、兄からまったく違う扱いを受けていたでしょう」ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、pp.331-332。
「イザベラは失う心など持っていない」って!(キャサリン〜!笑)
キャサリンのイザベラの批判が凄まじいですね(笑)。まあ、心から信じていた親友に裏切られたようなものなので、仕方がありません。
こういった「キャサリンの学び」や「キャサリンの心の成長」が、マクミランリーダーズ版だと描き切れていないというのも、マクミランリーダーズ版の残念なところです・・・。
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ポイント③:ティルニー将軍の真意「お金持ちの娘だから優しくしていた」
『ノーサンガー・アビー』で、一番わかりにくかったのはこれです。
ティルニー将軍は、ヘンリーがキャサリンを気に入ったのを知って、キャサリンに興味を持ちます。そして、キャサリンをノーサンガー・アビーの自宅に招待し、常に優しく歓待します。それがある日、急にキャサリンに対して怒り出し、彼女を実家に強制的に送り返してしまうのです。
このティルニー将軍の態度の急変の理由については、物語のラストで畳み掛けるように説明されていたため、初めて読んだ時にはよく理解ができませんでした。その後原作を読んでやっと理解できたので、順に見ていきながら解説していきたいと思います。
ティルニー将軍の態度(1):歓迎〜怒りへと急変するまで
ティルニー将軍は、ノーサンガー・アビーにキャサリンを招待し、お屋敷の中を案内したり、一緒に庭を散歩したり、食事をしたりと、キャリンとの時間を楽しみます。そして、ついにはヘンリーが普段住んでいるウッドストン(Woodston)の小さな村にもキャサリンを連れて行きます。
ヘンリーの家は小さくて可愛らしく、花々のあふれる綺麗なお庭もあって、キャサリンはすっかり気に入ってしまいます。そんなキャサリンに、ティルニー将軍は声をかけます。
‘Have you enjoyed your visit, Miss Morland?’ the General asked. ‘Do you like my son’s house?’
‘Oh, yes,’ Catherine replied. ‘I like it very much.’
‘Will you come again?’ the General asked. ‘You will always be welcome here — and at Northanger Abbey.‘
Catherine did not speak. But she understood.
‘General Tilney likes me,’ she said to herself. ‘But does Henry love me? Does he want to marry me?’*日本語訳(拙訳)*
「ここに来て楽しかったかね、モーランドお嬢さん?」と、将軍は尋ねた。「息子の家は気に入ったかね?」
「ええ、もちろん」と、キャサリンは答えた。「とても気に入りましたわ」
「また来るかね?」と、将軍は尋ねた。「君ならいつでも歓迎するよ。ここも — ノーサンガー・アビーも」
キャサリンは何も言わなかった。しかし、彼女にはわかっていた。
「ティルニー将軍は、私のことを気に入ってくださったのね」と、彼女は心の中で思った。「でも、ヘンリーは私のことを愛してくれているのかしら?結婚したいと思ってくださっているのかしら?」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.53.
キャサリンにこんな温かい言葉をかけてくれて、心からキャサリンを歓迎してくれていたティルニー将軍でしたが、数日後に態度が一変します。
数日後、エレノアが血相を変えて、キャサリンのところにやってきます。そして「キャサリンは翌日にはノーサンガー・アビーを出ていかなければならなくなったっこと」、理由はわからないけれど「ティルニー将軍が激怒していること」を伝えます。キャサリンは翌日、早朝に馬車に乗せられ、わけもわからないまま、実家のあるフラートンに送還されてしまいます。
ティルニー将軍の態度の急変には、理由がありました。
ティルニー将軍の態度(2):お金持ちの娘だから優しくしていた。
わけもわからないまま強制送還され、悲しみに明け暮れて毎日泣いていたキャサリンのところに、なんとヘンリーが訪ねてきます。
‘I went back to the Abbey last Monday,’ Henry said. ‘You were not there. I spoke to my father. “You must never see Catherine again,” my father said.’
‘But I have done nothing wrong,’ Catherine said.
‘No, you have done nothing wrong,‘ said Henry. ‘I will tell you everything.‘ He smiled at Catherine.*日本語訳(拙訳)*
「先週の月曜日にアビーに戻ったんだ」と、ヘンリーは言った。「そうしたら君はいなくなっていて、父さんに話しかけたら、『もうキャサリンには二度と会うな』だなんて言うじゃないか」
「でも、私は何も悪いことをしていないわ」と、キャサリンは言った。
「うん、君は何も悪いことをしていないよ」と、ヘンリーは言った。「ぜんぶ話すよ」と、彼はキャサリンに微笑んだ。ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.61.
そしてヘンリーは、ティルニー将軍の理不尽な態度の真相を、キャサリンに説明します。
‘My father likes rich people,‘ he said. ‘My father spoke to John Thorpe in Bath.’
‘John Thorpe?’ Catherine said. ‘What did he tell your father about me?’
‘John Thorpe said, “Miss Morland’s father is very rich. And the Allens have money too. They will give it to Miss Morland.” Those were his words,’ said Henry.
‘But my father in not very rich,‘ said Catherine. ‘And the Allens are not going to give me any money.‘
‘I know that,’ said Henry. ‘John Thorpe lied to my father. But my father heard the truth in London. John Thorpe told him the truth. My father was very angry and he sent you away from Northanger Abbey.’*日本語訳(拙訳)*
「父さんは裕福な人が好きでね」と、彼は言った。「父さんはバースでジョン・ソープに話しかけたんだよ」
「ジョン・ソープですって?」と、キャサリンは言った。「彼はあなたのお父様に、私のことを何て伝えたのかしら?」
「ジョン・ソープはこう言ったんだ。『モーランド嬢は、父親が相当な資産家で、アレン家もお金持ちだということですよ。モーランド嬢は、いずれそれを相続することになるんです』と。これが彼の言い分だよ」と、ヘンリーは言った。
「でも、私のお父様はそんなにお金持ちではないし」と、キャサリンは言った。「アレン家も私に財産を譲ったりなんてしないわ」
「わかっているよ」と、ヘンリーは言った。「ジョン・ソープは、父さんに嘘をついたのさ。でも父さんは、ロンドンで真実を知った。ジョン・ソープが本当のことを話したんだよ。父さんは激怒して、君をノーサンガー・アビーから追い出したってわけさ」ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, pp.61-62.
うーん、わかりにくいですよね。
マクミランリーダーズ版では、事の真相の説明はこれだけなんですが、ティルニー将軍の価値観も、時系列もちょっとわかりにくいと思います。
整理すると、まず、ティルニー将軍は「裕福な人が好き」です。そして、ここでも「ティルニー家の善い人バイアス」が作用し、ティルニー将軍も一見全ての言動が徳が高く見えてしまいますが、実は口では調子のいいことを言うものの、お腹の中では黒いことを考えている人です。
これは、キャサリンもヘンリーもバースにいた時のお話ですが、ティルニー将軍は、息子のヘンリーがキャサリンに興味を持っていることを知り、社交会館の会場でジョン・ソープに話しかけ、キャサリンがどのような娘なのかを聞き出そうとしました。その時にジョン・ソープは嘘をつき、キャサリンの家(モーランド家)がとても裕福な家庭で、キャサリンが将来的に莫大な財産を相続する予定だとティルニー将軍に告げます。
当時はジョン・ソープがまだキャサリンに恋をしていて、彼女にアプローチをしている頃です。ジョンがなぜこのような嘘をついたのかというと、ジョンの性格について、原作ではこのように丁寧な描写がされています。まあ、こういう人いますよね(笑)。
ジョンはティルニー将軍のような偉い人と話ができるのがうれしくて、得意になっていろいろなことをしゃべった。ちょうどそのころ、ジェイムズとイザベラの婚約が今日か明日かと期待され、自分もキャサリンとの結婚を決意しようとしていたときだった。それでジョンは—自分の虚栄心と強欲ゆえに、モーランド家は金持ちだと前から誤解していたのだが—さらに虚栄心に駆られて、モーランド家はものすごいお金持ちだと将軍に言ってしまったのである。ジョンは、自分をたいへんな重要人物だと思い込んでいて、自分の親戚も、これから親戚になる者も、全員立派な家柄の出でなければならないと思っている。だから彼の知り合いは、つきあいが増すにつれて財産も増えてくるのである。そういうわけで、友人のジェイムズ・モーランドの遺産相続の額も、最初から過大評価されていたのだが、妹のイザベラがジェイムズと親しくなると、その額はますます増えていった。ジェイムズの遺産相続の額をまず二倍にし、父モーランド氏の聖職禄の収入も二倍にし、その個人財産も三倍にし、おまけにお金持ちの伯母がいることにし、子供が多すぎるので半分に減らし、こうしてジョンは、モーランド家は大金持ちのたいへん立派な一家だと、将軍に報告したのである。しかし、将軍が特別な関心を寄せ、自分も結婚の思惑を抱いているキャサリンの財産については、ジョンはさらに隠し玉を用意していた。キャサリンはアレン氏の土地を相続し、父親から一万ポンドか一万五千ポンド与えられることになっていると将軍に言ったのだ。キャサリンはアレン夫妻ととても親しくしているので、かなりの遺産をもらえるはずだと、ジョンは本気でそう思っており、キャサリンはアレン氏から正式に認められた女相続人だと、将軍に言ったのである。
ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、pp.372-373。
「だから彼の知り合いは、つきあいが増すにつれて財産も増えてくるのである。」
って、もう、面白すぎるんですが(笑)。
少し前の話に戻りますが、この描写を見ると、イザベラがジェイムズの相続する財産の額にがっかりしたのは仕方のないことだったような気がします。たぶんイザベラも、事前にモーランド家のご立派な家柄について、ジョンから耳にタコができるくらい聞いていたでしょうから、
「あら? モーランド氏はお金持ちでしょう? もっと持っているでしょう? なのに長男にこれだけしかくださらないの? ケチー!!」
って思ってしまったんじゃないかな。ぜんぶジョンのせいじゃないか!(笑)
・・・そしてティルニー将軍の話に戻りますが、ティルニー将軍はこのジョン・ソープの虚栄心にまみれた情報を入手して大変喜び、キャサリンに優しく接し、歓迎します。キャサリンがお金持ちの家の娘だから、キャサリンをソープ家には渡すまい、ティルニー家に迎え入れ、息子と結婚させようと、優しくしているのです。
腹 黒 い 。(笑)
ティルニー将軍の態度(3):ロンドンでのジョン・ソープとの再会により、真実を知った。
ところが、キャサリンがノーサンガー・アビーに滞在中のある日のこと、ティルニー将軍は、用事ができ、単身でロンドンを訪れます。そこでティルニー将軍はジョン・ソープと再会し、彼からキャサリンの真実を聞かされます。
「キャサリンの真実」と一言で言いましたが、このことについては、マクミランリーダーズ版では、ヘンリーの「でも父さんは、ロンドンで真実を知った。ジョン・ソープが本当のことを話したんだよ。」という、たったこれだけのセリフしか描写がありません。ジョンが何をティルニー将軍に話したのかさっぱりわかりません。
しかし、原作を読むと、ジョンは「本当のこと」どころか「キャサリンの家は実は生活に困窮している」など、前回とは打って変わって、今度は実際よりも悪くキャサリンのことをティルニー将軍に伝えたことがわかります。
ティルニー将軍がジョン・ソープと再会したのは、キャサリンがノーサンガー・アビーに滞在している真っ最中。すなわち、ジョンがとっくにキャサリンに振られた後です。そのため、ジョンはすっかりキャサリンに失望してしまっているのです。
将軍はロンドンで偶然ジョンに会ったのだが、ジョンは依然とまったく正反対の精神状態にあった。キャサリンにプロポーズを断わられ、イザベラとジェイムズを仲直りさせる努力も失敗に終わり、気がむしゃくしゃしていたし、モーランド家とのつきあいはもう永遠におしまいだと思い、何の役にも立たない友情など蹴飛ばしてしまえという気分だった。それで、以前モーランド家を褒めるために将軍に言った言葉を、大急ぎで全部取り消したのである。自分はジェイムズ・モーランドの自慢話にだまされて、彼の父親を大金持ちの立派な人物だと思い込み、モーランド家の経済状態も人柄も誤解していたが、この二、三週間の出来事のおかげで、やっとほんとうのことがわかった。ジェイムズとイザベラの結婚話がもちあがったとき、モーランド氏は、最初は気前のいい申し出をして、すごく乗り気だったが、ジョンに鋭く問い詰められると、結婚するふたりに人並みの援助もしてあげられないことを白状したそうだ。じつは、モーランド家はとても貧乏な一家で、信じがたいほどの子沢山で、ジョンが最近知ったところによると、近所の人たちからもぜんぜん尊敬されていない。つまり、身分不相応な暮しをするために、子供を金持ちと結婚させようとたくらんでいる、ずうずうしいほら吹き一家なのだそうだ。
将軍はこれを聞いてびっくり仰天したが、にわかには信じがたいので、アレン氏の名前をもちだした。するとジョンは、それも自分の誤解だったと言った。アレン夫妻がモーランド家の近くに長年住んでいるので、つい誤解してしまったのだが、アレン家の土地を相続するのはキャサリンではなくて、別の青年だということもわかったそうだ。これ以上聞く必要はなかった。将軍は、自分以外の全人類に腹を立て、翌日ただちにノーサンガー・アビーに戻り、そして、読者の皆さまがすでにご存じの行動に出たのである。ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、pp.374-376。
ジョンよ・・・お前か・・・。
うーん、でも、まあ、ここまで説明されたら、ティルニー将軍の怒りの理由はよくわかりました。キャサリンがとばっちりだというのもわかりました。全部ジョンだってことがよくわかりました!
それにしても、本当にジョンは嘘ばっかり! 虚栄心ばっかり!で、
トラブルばっかり引き起こしますね。
キャサリンがジョンを好きにならなかったのは、容姿とかそういうもの以前にいつも嘘ばかりついてたからだよ! だんだんキャサリンに信用されなくなっていったじゃない! 思い出して! 反省して! と小一時間くらい説教したくなりました。(聞く耳を持たないんだろうな。笑)
でも、ティルニー将軍もティルニー将軍ですよね。勝手に勘違いしておいて、勝手に怒って、なんの説明もせずに女性を傷つけて追い出すなんて、理不尽にもほどがある!って感じです。本当にキャサリンは全く悪いことをしていないのに。
この八つ当たり将軍ー!
ティルニー将軍の態度(4):エレノアがお金持ちと結婚したから機嫌を直した。
ティルニーお父様はお金大好きですが、ヘンリーは財産など気にしていません。ヘンリーは「お金など関係ないよ(I do not care about money.)(p.62)」と言って、キャサリンにプロポーズします。
でも一方のティルニー将軍は、「キャサリンにはもう会うな」とまで言うくらい怒り心頭中です。このままでは、ヘンリーとキャサリンの結婚が許してもらえるはずもありません。
しかしここで状況が一転します。ヘンリーの妹のエレノアの結婚が決まったのです。エレノアはキャサリンに、幸せなニュースを知らせる手紙を送ります。
I have some good news. I am going to get married in the summer. The young man is very handsome and very rich. My father is very happy.
*日本語訳(拙訳)*
良い知らせがあるのよ。私、この夏に結婚することになったの。相手の男性は、とてもハンサムで、とてもお金持ちなのよ。お父様がとても喜んでくださっているわ。ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.63.
エレノアが裕福な家の青年と結婚することが決まり、すっかり機嫌を良くしたティルニー将軍は、ヘンリーとキャサリンの結婚も許してしまいます。
また、この裕福な家の青年が、原作では子爵とわかりますが、エレノアと子爵の結婚がティルニー将軍の機嫌をよくした上に、「モーランド家の真実」、すなわち「モーランド家の正確な財産状態」がきちんとティルニー将軍に伝わったことが、ヘンリーとキャサリンの結婚の助けとなったことが原作では語られています。
将軍が耳を傾ける気になると、モーランド氏本人から伝えられ、将軍はこういう事実を知った。ジョン・ソープが最初に吹聴した言葉、つまり、モーランド家は大金持ちだというのは事実と異なっているが、彼が悪意によって前言を否定した言葉、つまり、モーランド家は非常に貧乏な一家だというのは、それ以上に事実と違っていた。モーランド家はお金にはまったく困っていないし、ぜんぜん貧乏ではないし、キャサリンは三千ポンドの持参金をもらえるという事実を、将軍は知ったのである。これはいままで聞いていた事実とはたいへんな違いであり、将軍の傷ついたプライドをなだめるのに大いに役立った。それに、将軍が苦労して入手した秘密情報も少なからず役に立った。つまり、フラートンの土地は、現在の所有主であるアレン氏の自由になるということで、したがって、「いずれは、アレン氏に気に入れらたキャサリンに……」などと、欲の皮が突っ張った想像ができるのである。
ージェーン・オースティン著、中野康司訳『ノーサンガー・アビー』、筑摩書房、2009年、pp.382-383。
ヘンリーとキャサリンが無事に結婚できてめでたしめでたし! ハッピーエンドで良かったのですが、このティルニー将軍の価値観がようやく理解できた時には、
「男も女も金なのか・・・」
と、衝撃を受けたものです(笑)。
まあでも、よくよく考えると、名家の人が結婚相手の家柄を気にするのは自然なことのような気もします。でも、そんな価値観を全く態度に出さずに、キャサリンに全力で優しく振舞っていたティルニー将軍が、恐ろしくもあり、おもしろいと感じました。今後のキャサリンの結婚生活が心配です(笑)。
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好きなシーン:ヘンリーの優しい一面
本音と建て前が見え隠れする中流階級の結婚事情を見てきましたが、そんな裏表の激しい世界ばかり見ていると心が荒んでしまうと思うので(笑)、心温まる大好きなシーンもご紹介しておきます!
実はキャサリン、ホラー小説が大好きです。しかも夢見がちで妄想癖があります(笑)。ティルニー家の実家であるノーサンガー・アビーに招待された時にも、ホラー小説の舞台になりそうな古い邸宅を訪れることができることを喜び、非常に胸をときめかせます。
そしてノーサンガー・アビーに到着した後、キャサリンは、ティルニー将軍との会話の中で、ヘンリーとエレノアの母親、つまりティルニー将軍の妻が9年前に亡くなったことを知ります。そして、ノーサンガー・アビーには「開けてはいけないティルニー将軍の妻の部屋」があることも知ります。このような材料を与えられて、キャサリンはうっかりその妄想癖を発揮してしまい、ヘンリーにそのひどい妄想内容を披露してしまいます。
‘Your mother died very suddenly. She was alone with your father. Your father did not love her. Was your mother — ?’
‘My dear Miss Morland,’ Henry said. ‘What are you saying? I was here. The doctor was here. My father was very unhappy. He loved my mother very much. Miss Morland, you have read too many horror-stories!‘
Catherine ran back to her room and cried.
‘I have been very foolish,’ she said to herself. ‘I love Henry. But he will never love me now. I will never read a horror-story again.’
But Henry was very kind to Catherine that evening. Soon she was very happy again.*日本語訳(拙訳)*
「あなたのお母様は本当に突然亡くなられた。彼女はあなたのお父様と二人きりだった。お父様は、お母様を愛していなかった。お母様は、もしかして — ?」
「こら、モーランドお嬢さん」と、ヘンリーは言った。「何の話をしているんだい?僕はここにいたよ。お医者様もここにいた。父さんはとても悲しんだよ。父さんは母さんのことをとても愛していたからね。モーランドお嬢さん、君はホラー小説の読みすぎなんじゃないかな!」
キャサリンは部屋に走って戻り、泣き出した。
「私ったら、なんてバカなのかしら」と、彼女は考えた。「私はヘンリーを愛しているわ。でも、彼はもう絶対に私のことなんて愛してくれないわ。もうホラー小説なんて二度と読まないわ」
しかしその夕方、ヘンリーはキャサリンにとても優しかった。キャサリンはすぐにまた元気になった。ーJane Austen, Northanger Abbey, Macmillan Education, 2005, p.49.
人のお母様をいいように妄想の材料に使ってしまって、「絶対にヘンリーに嫌われた・・・!」と落ち込むキャサリンですが、それを優しく受け止めてキャサリンを安心させてあげるヘンリー。イケメンです!!
- ちなみに「ノーサンガー・アビー」のように、お屋敷の名前に「アビー(Abbey)」がつくのは、もともと修道院だったことを表しています。アビーは、ロンドンの有名な教会に「ウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)」があるように、建物としては教会を意味します。そして当時、貴族や大地主が、もともと大修道院だった建物を払い下げられて自らの邸宅とすることがあり、それを「アビー(Abbey)」と呼んでいたそうです。
- マクミランリーダーズ版では、書名までは出てきませんが、原作では、キャサリンが特に好んで読んでいたのはラドクリフ夫人のゴシック小説『ユードルフォの謎』です。ヘンリーも実は小説好きで、『ユードルフォの謎』はおもしろくて「二日で読み終えた(邦訳版、p.160)」という描写もあります。19世紀初頭当時は、小説は低俗だとバカにされる傾向があったため、ヘンリーのような知的な人が堂々と「小説が大好き」と言っているのを見て、キャサリンも自分が高められる気持ちになったと思われます。気が合うふたりですね。(ちなみにジョンは小説をバカにします。笑)
まとめ:『ノーサンガー・アビー』は原作も合わせて読むべし!
マクミランリーダーズはレベル1からレベル2まで合わせて、『ノーサンガー・アビー』で50冊を読んだことは冒頭で述べました。その半分くらいは古典のリトールドものでしたが、はっきり言います。
『ノーサンガー・アビー』だけは、GRを楽しんだ後に、原作も一緒に楽しんだ方が良いです。もったいないです。オースティンの偉大さがわかります!
この物語を理解するために、原作を「最初の数ページだけでも」、と思って手に取ってしまったが最後、ページをめくる手が止まらなくなっていました。気づいたら100ページくらいまで読んでいたので、もういいやと思って、全部読んでしまいました(笑)。
オースティンと同時代のサマセット・モームという小説家が、オースティンの『高慢と偏見』について、「大した事件が起こらないのに、ページを繰らずにはいられない」と評したそうですが、『ノーサンガー・アビー』もまさにそれ!! 知性とユーモアが混じった軽快な文体がたまりません。ジェーンはとても愉快で快活な女性だったんだろうなと思ってしまいます(笑)。
結局原作まで読んでしまったのですが、結果としては、オースティンの魅力を知れた、よい読書だったと思います。
それでは、今日も素敵な一日を!
fummy