英語多読でイギリス文学を楽しむ!マクミランリーダーズ レベル2 (Beginner) の洋書を紹介 #04 〜イギリス編〜

東京のすみっこより愛をこめて。fummyです😊💡

Macmillan Readers(マクミランリーダーズ) レベル2(Beginner)の洋書を詳しく紹介するシリーズも、ついに最終回第4弾(#04)です。

※ちなみに前回の記事(#03)はこちら。

古典のリトールド(retold)もの(有名な古典文学をGR用に簡単な英語に直したもの)のシリーズを読み進めていますが、本記事は特に、イギリス作家の作品を集めた「イギリス編」です。

イギリス編は全部で10冊。やっぱり圧倒的におもしろいチャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)を始め、壮々たる有名作家たちが登場します。ぜひご期待ください!

しかも、イギリス編を読むと、

8万7392語。(10冊)

が達成できますので、張り切っていきましょう〜!^^

本記事では、各作品を紹介するにあたって、あらすじを書くとともに、個人的に好きなシーンの引用と日本語訳(拙訳)もつけています。読む前の参考にしていただくのはもちろん、読んだ後の復習に使っていただければ嬉しいです!(重要なネタバレはしないようにしていますが、ネタバレ気味のところは注意喚起しています)

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Macmillan Readers レベル2(Beginner) 〜イギリス編〜 について

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Macmillan Readers(マクミランリーダーズ)のレベル2(Beginner)は35冊発行されていて、これらの本は、英語多読協会SSSによって、MMR2とMMR2+の2種類に分類されてます。(参考ページ:SSS推薦・多読用基本洋書のご紹介

【Macmillan Readers レベル2 全35冊の構成】
※赤字が今回ご紹介する範囲です。

タイプ 総語数 YL ページ数 紹介記事 冊数
MMR2
(中綴本)
2000
-3000
1.2-
1.4
32前後 英語多読におすすめ!マクミランリーダーズ(Macmillan Readers) レベル2( Beginner)の洋書を紹介 #01 12冊
MMR2+
(背表紙あり)
6000
-10000
1.6-
1.8
64前後 英語多読でアメリカ文学を楽しむ!マクミランリーダーズ レベル2 (Beginner) の洋書を紹介 #02 〜アメリカ編〜 9冊
英語多読でフランス文学を楽しむ!マクミランリーダーズ レベル2 (Beginner) の洋書を紹介 #03 〜フランス編〜 4冊
第4弾(#04)
イギリス編
10冊

今回は「MMR2+(背表紙あり)」の23冊のうち、イギリス作家の作品9冊と伝記1冊をご紹介します!

一応「この順番で読むと、時代背景も含めて内容が理解しやすい」とわたしが思う順番でご紹介していきます。でも、ここまで来ると、各作品の難易度はほとんど変わらないので、基本的には興味のある作品から読んでいただければよいと思います!

参考
各作品の語数は、「Macmillan Readers カタログ」を参考にしています。

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チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)

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チャールズ・ディケンズの肖像画(画像はWikipediaより)

チャールズ・ディケンズ(1812-1870)は、ヴィクトリア朝を代表するイギリスの国民的作家です。『大いなる遺産』、『オリバー・ツイスト』、『デイビッド・コパフィールド』など、数多くの傑作を残しています

中でもディズニー映画にもなっている『クリスマス・キャロル』は、わたしも含めて世界中の子どもたちに恐怖とトラウマを残したのではないでしょうか(笑)。未来の墓場の光景は未だに思い出しますよ・・・!(T_T)

ディケンズは少年時代に教育をほとんど受けておらず、靴墨工場に働きに出されるという、辛い経験をしています。この幼い頃の苦難は、ディケンズの作品に大きな影響を及ぼしていて、彼はしばしば貴族と下層階級の対立という題材を、労働者階級に同情的な視点で描いています。

MMR2+のレベルでは、歴史小説である『二都物語』と、『信号手』と『法廷の幽霊』の二つの短編が収録された短編集の、合計2冊を読むことができます!

二都物語 〜A Tale of Two Cities〜 (6751語)

あらすじ・所感・好きなシーンなど

時代は1775〜1792年。「イギリスのロンドン」と「フランスのパリ」という二つの都市を舞台にした歴史小説です。フランス革命(1789)を背景として、チャールズ・ダーニーとシドニー・カートンという、容貌のよく似た二人の男たちの、ルーシー・マネットという少女に対する愛の物語が語られます。

とても面白くて語り過ぎてしまったため、感想を別記事にまとめました!

登場人物が多くて、関係がちょっと複雑な物語なのですが、人物相関図などもまとめたので、ぜひ読むときの参考にしていただければと思います^^

『信号手』と『法廷の幽霊』 〜The Signalman and The Ghost at the Trial〜 (10,374語)

あらすじ

歴史小説の『二都物語』とはうって変わって『信号手』と『法廷の幽霊』はホラー小説です。
しかし舞台がロンドンなので、『二都物語』でダーニーの裁判が行われていたオールド・ベイリー(中央刑事裁判所)なんかも登場して、ちょっと嬉しくなりますよ^^

収録作品
  1. The Signalman(信号手)
    ある信号手のところに、一人の男が訪ねてきました。男は信号手から、奇妙な話を聞かされます。ここ一年の間に、線路に何度か幽霊が現れ、そのたびに必ず鉄道で人が死ぬというのです。そしてここ数日、また幽霊が現れるようになったと言います。これは再び死者がでる前触れなのでしょうか・・・?
  2. The Gohst at the Trial(法廷の幽霊)
    ロンドンのピカデリー通り沿いにあるアパートに住むジョージ・フォザーリー(George Fotherley)。彼はある日、ピカデリー通りを急ぐ二人の男の夢を見ます。一人は何かを恐れるように足早に通りを進む”怯えた男(the Frightened Man)“、そしてもう一人は、その男を後から追う”青ざめた男(the Pale Man)“。
    それから二ヶ月後、ジョージはオールド・ベイリーに陪審員として召喚されます。新聞にも載っていたある殺人事件の裁判の法廷へと案内されると、彼はそこで、夢に見た”怯えた男”に再会するのでした。

所感と好きなシーン

信号手』は結構怖いです(笑)。怖いというか、不気味さを掻き立てるディケンズの表現手法が本当に見事だと思わされました。「死」を予感させる現象が反復されるんですよね。

全部読み終わってまた最初に戻ると、冒頭で信号手が訪問者に話しかけられた時に、なぜギョッとするのかがわかります。怖いけど、もう一度読みたくなってしまう、そんな作品です(ホラーは基本的に苦手なのに…!)。

I shouted down to him. ‘Hello! Hello!’
The signalman heard my voice but he did not look up at me. He turned round and he looked towards the tunnel. I was surprised. I was above him, at the top of the cutting. Why was the signalman looking towards the tunnel?
The man turned round again, and I saw his face. He was frightened! Why was the signalman frightened?
I shouted again. ‘Hello! Hello!’
At last, the signalman looked up at me.
‘I want to talk to you!’ I shouted. ‘Is there a path into this cutting?’

*日本語訳(拙訳)*
私は下に向かって叫んだ。「おーい!おーい!」
私の声は信号手に聞こえていたが、彼は私の方を見上げなかった。彼は振り返ってトンネルの方を見つめた。私は驚いた。私は彼の上方、切り通しの上にいるというのに、どうして信号手はトンネルの方を見つめているのだろう?
男が再び向き直ったため、私には彼の顔が見えた。彼は怯えていた!どうして信号手は怯えているのだろう?
私はもう一度叫んだ。「おーい!おーい!」
信号手はやっと、私の方を見上げた。
「君と話がしたいんだ!」と、私は叫んだ。「この切り通しに降りる道はないかね?」

Charles Dickens, The Signalman and Ghost at Trial Macmillan Education, 2005, pp.11-12

一方、『法廷の幽霊』はオールド・ベイリー(中央刑事裁判所)での裁判がストーリーの中心になります。こちらは、幽霊らしき姿がしょっちゅう登場するので、逆にあまり怖くないです(笑)。

以下のシーンは、一応真面目なシーンなのですが、コミカルな想像をしてしまって、ついフフッと笑ってしまいました(笑)。

‘This man is not a murderer,’ the lawyer said. ‘He is a good man. Nobody killed his friend — the man killed himself. He killed himself with his own knife.
The lawyer spoke these words loudly. The members of the jury were surprised. The judge was surprised. The lawyer for the prosecution was surprised.
And the ghost was surprised! The Pale Man stood next to the lawyer for the defence. He moved his head. Then he moved his left arm behind his back. And he moved his right arm behind his back.
The Pale Man looked at me. He was telling me something again. He was saying, ‘It is not possible. I could not kill myself with my right hand. I could not kill myself with my left hand.’ And this was true!

*日本語訳(拙訳)*
「この男は犯人ではありません」と、弁護士は言った。「彼は善良な男です。彼の友人は殺されたのではありません。– 自殺したのです。彼は、彼自身のナイフで、自殺したのです。
こう言って、弁護士は高らかに訴えた。陪審員たちは驚いた。裁判官は驚いた。原告側の弁護士は驚いた。
幽霊も驚いていた! ”青ざめた男”は、被告側の弁護士の隣に立った。彼はかぶりを振った。そして、左腕を自身の背中の後ろに回した。そして今度は、右腕を自身の背中の後ろに回した。
”青ざめた男”は、私を見つめた。彼は再び、何かを伝えようとしていた。彼はこう言っていたのだ。「不可能だ。私は右手で自殺などできない。左手でも自殺などできない。」 確かに、これは真実だ!

Charles Dickens, The Signalman and Ghost at Trial Macmillan Education, 2005, pp.61

ロボボ@幽霊
いや無理無理!無理だから!
自分で背中を刺すとか、普通に考えて無理だから!!

っていう声が聞こえてきそうです(笑)。

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M. R. ジェイムズ(Montague Rhodes James)

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M. R. ジェイムズの写真(画像はWikipediaより)

ディケンズのホラー小説の流れで、イギリス屈指の怪奇小説家、モンタギュウ・ロウズ・ジェイムズ(1862-1936)をご紹介します!

M. R. ジェイムズは、ケント州の牧師の家の生まれです。彼はケンブリッジ大学を卒業した後、古文書学者、聖書学者として名声を得て、博物館長やケンブリッジ大学の副総長などを歴任しました。

そんな超インテリな古文書学者としての生活のかたわら、執筆した怪奇小説が人気を博し、ジェイムズは、アルジャーノン・ブラックウッド、アーサー・マッケンとともに近代イギリス怪奇小説の三巨匠に数えられています。

The House in the Picture and Abbot Thomas’ Treasure (8828語)

あらすじ

M. R.ジェイムズの怪奇小説の2本立てです。

収録作品
  1. 絵の中の家』:舞台は1895年のイギリス・オックスフォード。
    ウィリアムズ氏はある日、田舎のお屋敷が描かれた絵を手に入れます。一見何の面白みもない絵だと思われたのですが、時間が経つにつれて絵が変化していくことに気づいて恐怖します…。
  2. トマス僧院長の宝』:舞台は1859年のイギリス某所。
    考古学者のサマトン氏は、ある古い教会で300年間眠り続けている財宝を求めて、トマス僧院長の残した暗号を解読します。財宝の在りかを突き止めたサマトン氏が現地に赴くと、そこには恐ろしい「番人」が潜んでいました…。

所感

博物館長やケンブリッジ大学の副総長などを務めた超インテリなM. R. ジェイムズの書いた短編小説だけあって、どちらの作品も主人公は学者です。

絵の中の家』は、刻々と変わっていく絵に恐怖と好奇心を掻き立てられます。しかしその一方で、大学に住み、使用人に身の回りの世話をしてもらって、夜には同僚と部屋でお茶をしながら知的な談笑を楽しむ…という、この時代のスーパー知識人の生活が垣間見られるのが面白いです!

トマス僧院長の宝』の方は、財宝のありかを示す暗号解読が熱い! 暗号が隠されている場所とか、暗号解読の方法などは、作者であるジェイムズの古文書学者としての専門性がいかんなく発揮されていて、つい夢中になってしまいます…!

好きなシーン

やっぱり、『絵の中の家』で、絵が刻々と変わっていくところでしょう。

学者のウィリアムズ氏は、居室に訪れた同僚のビンクスに、最近手に入れたつまらない絵の話をしました。すると、ビンクスが興味を持ったため、ウィリアムズ氏は「いまいちな絵だよ」と言って、絵をビンクスに手渡します。ビンクスは「悪くない絵じゃないか。月、それに月光がいい。それから、下の方に人がいるね」と絵の感想を述べます。

ウィリアムズ氏は驚きました。なぜなら、ウィリアムズ氏が絵を初めて見たときは、暗い空と屋敷があるだけで、月も人物も描かれていなかったはずだからです。

‘Give me the picture to me, Binks,’ said Mr Williams.
‘Yes, the moonlight is good,’ he said. ‘I didn’t see that before. But where is the person? Oh I see it. There’s a head at the bottom of the picture. Is it a man or a woman? I don’t know.’
Mr Williams thought for a moment.
‘That is strange! I didn’t see it before,’ he said. ‘And I didn’t see the moonlight.’

*日本語訳(拙訳)*
「絵を返してくれないか、ビンクス」と、ウィリアムズ氏は言った。
「うん、月光が見事だな」と、彼は言った。「こんなもの、前はなかったぞ。あと、人はどこにいる? ああ、いた。絵の下の方に頭があるな。男なんだろうか、それとも女か? わからないな。」
ウィリアムズ氏は、一瞬考えをめぐらせた。
「おかしいぞ!人なんて前はいなかった」と、彼は言った。「それに、月光もだ」

M. R. James, The House in the Picture and Abbot Thomas’ Treasure Macmillan Education, 2005, p.13

ホラー小説ですが、そこまで怖くはないので、怖がりの方もご安心ください。
でも、不思議な展開に、好奇心をそそられます!

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シャーロット・ブロンテ(Charlotte Brontë)

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シャーロット・ブロンテの肖像画(画像はWikipediaより)

シャーロット・ブロンテ(1816-1855)は、イギリス北部ヨークシャー出身の女性作家です。ブロンテ三姉妹の長女で、シャーロット、エミリー、アン・ブロンテの三姉妹は、3人ともにヴィクトリア朝を代表する作家です。当時は女性作家の小説が認められることは困難だったため、それぞれが男性のペンネームで出版をし、ヒット作を生み出しました。

シャーロット・ブロンテの作品で有名なのは、自伝的作品の『ジェーン・エア』。幼い頃の環境劣悪な寄宿舎での生活、家庭教師として働いた日々、既婚男性との恋愛など、シャーロット自身の経験が、『ジェーン・エア』に描かれています。

ジェーン・エア 〜Jane Eyre〜 (8690語)

あらすじ

1830年代のイギリス北部を舞台にした物語です。
ジェーン・エア(Jane Eyre)は、孤児でした。親戚に引き取られたものの、叔母のリード夫人といとこから差別を受け、9歳の時に寄宿学校のローウッド学院に送られます。生徒として6年間、教師として2年間をそこで過ごしたのち、ジェーンはソーンフィールド邸で家庭教師として働くことになります。

ジェーンはソーンフィールド邸で働くうちに、主人のエドワード・ロチェスター(Edwaed Rochester)と恋に落ち、求婚され、身分を超えて結婚をすることになります。ところが結婚式当日、ロチェスターには気の狂った妻がいたことが判明するのです。

所感と好きなシーン

屋内は美しい家具や調度品にあふれ、外には美しい庭園が広がり、そして邸宅の窓からは美しいヨークシャーの景色を見渡すことができる・・・というふうに、これでもかというばかりに美しい場所であるソーンフィールド邸を、なぜロチェスター氏が毛嫌いするのか。ソーンフィールド邸に隠された秘密が、徐々に明らかになっていくのが面白かったです!

また、19世紀半ばのヴィクトリア朝という時代に、ジェーンが「女性から男性に告白する」ことや、財産や身分にとらわれずに「自由恋愛をして結婚をする」というのは、当時の社会常識に反する行為で、大きな反響を呼んだそうです。一応、ジェーンがロチェスター氏と自分との身分差を気にするシーンはありますね。

‘Jane Eyre,’ I said to myself. ‘You are not pretty. And you are poor. Mr Rochester will never marry you. He will marry Miss Blanche Ingram. She is a rich lady. You are a poor governess. Forget Mr Rochester, Jane Eyre! Forget him!’

*日本語訳(拙訳)*
「ジェーン・エア」と、私は心の中で言い聞かせました。「あなたは綺麗ではないし、しかも貧乏だわ。ロチェスター様があなたと結婚するはずがないのよ。彼は、ブランチェ・イングラム様と結婚するの。あの方はお金持ちのご婦人ですもの。あなたはしがない家庭教師。ロチェスター様のことは忘れるのよ、ジェーン・エア!彼のことは忘れるの!」

Charlotte Brontë, Jane Eyre, Macmillan Education, 2007, p.30.

さらに「ヒロインが美しくない」というのが、当時としては斬新だったとのこと。これは作者のシャーロット自身をモデルにしているからなのですが・・・、ちょっと、この点に関しては、わたしは異議を唱えたい!

まず、このマクミランリーダーズのシリーズは、冒頭に必ず作者と作品の紹介ページがあるのですが、シャーロット・ブロンテの容姿について、以下のように書かれています。

Charlotte was not pretty and her eyes were weak. But Charlotte was clever and she had a strong character.

*日本語訳(拙訳)*
シャーロットは綺麗ではなく、目が悪かった。しかし、シャーロットは聡明で、強い個性を持っていた。

Charlotte Brontë, Jane Eyre, Macmillan Education, 2007, p.4.

そして次に、この肖像画をご覧ください。

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シャーロット・ブロンテの肖像画(画像はWikipediaより)

とても綺麗なんですが?

日本人のわたしとイギリス人とでは、美意識が違うんでしょうか。本では、この肖像画とこの説明文が同じページに載っているので、意味を理解しかねて、視線が肖像画と説明文の間を5回くらい行き来してしまったじゃないですか(笑)。

そして、さらに言うなら、挿絵がある意味よろしくないんですよね。

以下はロチェスター氏の求婚シーンです。

‘Jane — I am not going to marry Miss Ingram,’ Mr Rochester said. ‘She is rich. She is beautiful. You are poor. You are not beautiful. But I want to marry you! Will you marry me, Jane?’

*日本語訳(拙訳)*
「ジェーン — 私はイングラムさんと結婚するつもりはないよ」と、ロチェスター様は言いました。「彼女はお金持ちで、美しい。君は貧しくて、美しくもない。それでも私は、君と結婚したいんだ!私と結婚してくれるかい、ジェーン?」

Charlotte Brontë, Jane Eyre, Macmillan Education, 2007, pp.41-42.

なんだか求婚シーンなのにロチェスター氏が身も蓋もないことを言っていますが(笑)。まあそれにはひとまず目をつぶることにして、それではここで、最愛の人にまで面と向かって「美しくない」と言われた、ジェーンのご尊顔をご覧ください。

シャーロット・ブロンテ, ジェーン・エア, Macmillan Readers, Beginner, Charlotte Brontë, Jane Eyre

Charlotte Brontë, Jane Eyre, Macmillan Education, 2007, p.51.

とても美しいんですが?

この挿絵の方は、「アメリカ編」の記事で紹介した、『ワシントン・スクエア』でも挿絵をされてましたね(挿絵のモリスは、それはそれはイケメンでした!)。

この方の挿絵は美しくて大好きなのですが、『ジェーン・エア』に関してだけ言うと、美しすぎて読者を混乱させますね(笑)。

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ジョージ・エリオット(George Eliot)

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ジョージ・エリオットの肖像画(画像はWikipediaより)

ジョージ・エリオット(1819-1880)は、イギリスのウォリックシャー出身。ヴィクトリア朝を代表する作家です。

「ジョージ」という男性名ですが、実は「ジョージ・エリオット」はペンネーム。本名はメアリー・アン・エヴァンズ(Mary Anne Evans)です。シャーロット・ブロンテを思い出していただきたいのですが、メアリーも彼女と同時代。ヴィクトリア朝のイギリス文壇では「女性作家の小説が認められることは困難だった」という背景があり、メアリーも男性名で作品を発表しました。

代表作は『サイラス・マーナー』、『ミドルマーチ』、そして今回ご紹介する『フロス河の水車場(The Mill on the Floss)』などです。

メアリーは非常に高度な教育を受けていて聡明なのですが、妻子持ちの哲学者ジョージ・ヘンリー・ルイス(George Henry Lewes)と23年間不倫関係にあり、世間から冷たい目で見られた時期もありました。その時の恋愛経験からか、今回ご紹介する『フロス河の水車場』では、「許されざる恋」をしてしまう男女の複雑な心理描写がかなりリアルに描かれています。

フロス河の水車場 〜The Mill on the Floss〜 (5865語)

あらすじ

舞台は1828〜1840年のイギリス東部。フロス河畔の水車小屋に、両親と兄とともに住む、黒い髪・黒い瞳の美しく聡明な少女、マギー・タリヴァー(Maggie Tulliver)の物語です。

マギーは純真で誠実な少女ですが、決して恋してはいけない男性に恋をしてしまいます。一人は知的で物静かで背中の歪んだ青年、フィリップ・ウェイカム(Philip Wakem)。彼は、フロス河の水の所有権をめぐる裁判で、タリヴァー家から水車小屋と土地の全てを奪い、多額の借金を背負わせたウェイカム弁護士の息子でした。二人は愛し合いますが、ウェイカム家を憎むマギーの兄によって別れさせられてしまいます。

次にマギーが恋をしたのは、マギーのいとこのルーシーの恋人、知的で長身でハンサムなスティーヴン・ゲスト(Stephen Guest)。マギーとスティーヴンはお互いに愛し合うようになりますが、この許されざる恋は、悲劇を生むことになります・・・。

所感と好きなシーン

登場人物の複雑な心理状況について思いを巡らせているうちに、気づいたら別記事にまとめていました(笑)。『フロス河の水車場』は日本語版のWikipediaなどは存在しないので(2019年1月時点)、あらすじやシーンの抜粋など、参照したい時にはぜひご活用いただければと思います!

たぶん10代の頃とかにこの作品を読んでいたら、ここまで色々考え込まなかっただろうし、この作品の良さも理解できなかったんじゃないかな、と思いました。一応、少しは人生経験を積んでこれてるってことかな(笑)。

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トーマス・ハーディ(Thomas Hardy)

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トーマス・ハーディの写真(画像はWikipediaより)

トーマス・ハーディ(1840-1928)は、イギリス南部のドーセット州出身。ヴィクトリア朝を代表する小説家、詩人です。

代表作は『ダーバヴィル家のテス』、『日陰者ジュード』、そして今回ご紹介する『ラッパ隊長(The Trumpet-Major)』など。数多くの著作を発表していて、邦訳も出版されています。

トーマス・ハーディは、イギリス南部・および南西部一帯をウェセックス(Wessex)と呼び、しばしばこの地域を物語の舞台に設定しました。ウェセックスの名前の由来は遠い昔、6世紀ごろに成立したイングランド七王国のひとつ、「ウェセックス王国(West Suxon, 西サクソン王国)」に遡ります。19世紀のハーディの時代には、行政の地名として「ウェセックス」は使用されていなかったのですが、彼は自身の作品の中でこの古い名前を用いています。

ちょっとおもしろい雑学として、トーマス・ハーディの遺体は、身体はロンドンのウエストミンスター寺院に、心臓は生まれ故郷のドーセットに埋葬されています。(ちなみに、ウエストミンスター寺院には、チャールズ・ディケンズも埋葬されています。)

ラッパ隊長 〜The Trumpet-Major〜 (9412語)

あらすじ

舞台は1804〜1807年のイギリス南部のウェセックス地方。バッドマス(Budmouth)という街の近くの、海沿いの小さな村オーバークーム(Overcombe)です。

ときはナポレオン戦争(1803-1815)真っ最中。ジョージ3世治世のイギリスと、ナポレオン治世のフランスが、ヨーロッパと海上を戦場に戦争をしていました。オーバークームはのどかな村ですが、イギリス海峡沿岸に位置しているため、村民たちはフランス軍が今日にでも海から攻めてくるのではないかと不安な日々を過ごしていました。

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オーバークームの場所。フランスとの緊張高まる海沿い。(Google Mapより作成)

アン・ガーランド(Anne Garland)は、オーバークームに住む、美しい金髪の少女でした。
このアンに、オーバークーム出身の3人の男性が恋をして争います。一人は、イギリス軍の騎馬隊に所属しているトランペット隊長ジョン・ラヴデイ(John Loveday)、その兄で船乗りのロバート(Robert Loveday)、そして、村を守るヨーマン(yeoman, 義勇騎兵)のフェスタス・デリマン(Festus Derriman)です。

アンは幼い頃からロバートが好きでしたが、ロバートはハンサムで恋多き青年でした。
相変わらず他の女性に恋をしていたロバートでしたが、次第にアンを好きになり、アンと結婚し、船乗りを辞めて家業の粉挽きを継ぐことを望むようになります。ところがロバートは、英仏の戦争が激化するにつれ、自分も船乗りとして祖国の役に立ちたいという思いが抑えきれなくなり、危険を承知で、ネルソン提督(Admiral Nelson)のヴィクトリー号への乗船を志願するのでした。

所感

まずは、アンに想いを寄せるオーバークーム出身の三人の男性たちをまとめておきますね。

アンに想いを寄せる三人の男性たち
  • ジョン・ラヴデイ(John Loveday):
    オーバーコームの粉挽きの息子。英国軍の騎馬隊に所属しているトランペット隊長。アンに何度か告白するものの、「好きだけれど恋愛対象として見られない」と一蹴される。
  • ロバート・ラヴデイ(Robert Loveday):
    ジョンの兄で、船乗り。ハンサムだが恋多き男性で、行った先々で色々な女性に恋をしている(笑)。アンは幼い頃からずっとロバートのことが好きだが、想いがなかなか実らない。
  • フェスタス・デリマン(Festus Derriman):
    オーバークームを守るヨーマン。赤い髪で大きな体躯。品性に欠け、アンに幾度となく強引に迫ろうとする。資産家の叔父を持ち、莫大な財産が彼に相続されることが期待される。アンはフェスタスのことが大嫌い。

英仏の戦争(ナポレオン戦争, 1803〜1815)を背景に、アンをめぐる恋愛模様が描かれているため、この時代のイギリス本土にいた人々の生活や心境がうかがえて面白いです!

マクミランリーダーズ(レベル2:Begginer)に、ちょうど同じ時代・同じ題材のハーマン・メルヴィル作『ビリー・バッド(Billy Budd)』があります。『ラッパ隊長』が陸側のお話なのに対して、『ビリー・バッド』は海上の英国軍の様子が描かれているので、合わせて読むと理解が深まって楽しいですよ!^^

こちらで『ビリー・バッド』のあらすじや所感などを紹介しています。

それにしても、「ドラグーン(騎馬隊)」と言う、めちゃくちゃかっこいい響き(笑)の部隊のトランペット隊長であるジョンが、兄のロバートに遠慮をしてしまって報われないのが切ないです。

軍人は結婚するべきじゃない。僕らは危険な生活をしているのだから。(Soldiers must not marry. We live dangerous lives.)(p.57)」って、いつも自分に言い聞かせるようにアンに言うんですよね。ジョンは一途だし、いつもアンのこと気にかけて優しいし、ハンサム(handsome)という描写はないもののロバートの弟だから絶対イケメンなのになあ・・・勿体ない!!と、思ってしまいます。

好きなシーン

ロバートは危うく他の女性と結婚しそうになりながらも、次第にアンへの愛に気づきます。しかし、彼がアンとの結婚を考えるようになった矢先、英仏の戦争が激化したことで、彼は突然愛国心と使命感に燃え出し、あのネルソン提督のヴィクトリー号の船乗りになります。そして何年も従軍し、時にはトラファルガーの海戦にも参戦して、フランスとスペインの連合艦隊を降して戦功をあげます。(!)

ロバートは本当に勝手な人なのですが、アンとの平和な結婚生活を捨て去ってまで、祖国のために大きなことを成し遂げたいという志に突き動かされて、戦場へと赴きます。ロバートが海に旅立った朝の、彼を想うアンの描写が美しいので引用しておきます。

‘The ship will sail along the coast of England,’ she thought. ‘Then it will turn south, towards Spain. I want to see Admiral Nelson’s ship.’
The next morning, she walked to the coast. She stood on the top of a high cliff. She looked towards the east. Soon she saw the white sails of the Victory. It was a big ship, with three rows of guns along its side.
‘Is Robert looking at this cliff now?’ she asked herself. ‘Is he thinking about me?’
Anne watched the great, silent ship sail past.
After half an hour, she could no longer see it.

*日本語訳(拙訳)*
「船はイギリスの海岸沿いを通って」と、アンは考えた。「それから南へ曲がって、スペインへと向かうはずよ。ネルソン提督の船が見たいわ」
翌朝、彼女は海岸へと歩いていき、高い崖の頂上に立った。アンは東の方角を見つめた。まもなくヴィクトリー号の白い帆が見えた。大きな船で、脇に大砲が三列並んでいた。
「ロバートはいま、この崖を見ているかしら?」と、アンは心の中で問いかけた。「わたしのことを想ってくれているかしら?」
アンは、その荘厳な船が通り過ぎるのを見つめた。
半刻もすると、船はもはや見えなくなった。

Thomas Hardy, The Trumpet-Major, Macmillan Education, 2005, p.51.

幼い頃からずっとロバートのことが好きだったアンの想いが、一応報われたのは良かったです。

でも一方で、アンはジョンに「あなたを愛すことはできない」と本人に言いながら、ジョンが他の女性と噂になるとヤキモチを焼くシーンがあったのはちょっと気になりました。まあ、乙女心ですね(笑)。(「あんなにわたしのことを好きって言ったのは嘘だったのね!」みたいな心境)

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ジェーン・オースティン(Jane Austen)

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ジェーン・オースティンの肖像画(画像はWikipediaより)

ジェーン・オースティン(1775-1817)は、19世紀初頭に活躍した、イギリス南部のハンプシャー、スティーブントン出身の小説家です。

代表作は、『分別と多感(Sense and Sensibility)』、『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』など。いずれも18世紀から19世紀イギリスの田舎の中流社会を舞台として、当時の名家の娘と紳士たちの私生活、恋愛模様、結婚事情などが描かれています。

彼女の作品は非常に高く評価されていて、近代イギリス長編小説の頂点とみなされています。もう200年も昔の作家ですが、映画化も何度もされているほど彼女の作品は人気が高く、手に取ってみると、ページをめくる手が止まらなくなる面白さだということがわかります。ちなみに今はイギリスの10ポンド札にオースティンの肖像が印刷されています。

ノーサンガー・アビー 〜Northanger Abbey〜 (7337語)

あらすじ

舞台は1802年のイギリス南西部。キャサリン・モーランド(Catherine Morland)は17歳の女の子で、保養地であるバース(Bath)に数週間滞在しています。キャサリンはそこで、兄のジェイムズ(James Morland)、バースで友達となったイザベラ・ソープ(Isabella Thorpe)、その兄のジョン・ソープ(John Thorpe)と一緒に、観劇や舞踏会を楽しんでいました。

イザベラとジェームズは次第にお互いに愛し合うようになり、ついには婚約します。ジョンもしつこくキャサリンに迫りますが、キャサリンはジョンのことは好きになれません。

キャサリンは、バース滞在中に出会った牧師のヘンリー・ティルニー(Henry Tilney)に恋をしていました。そして、ヘンリーの妹のエレノア・ティルニー(Eleanor Tilney)と友達になると、キャサリンは次第にヘンリーやエレノアと行動を共にするようになります。そしてそんなある日、キャサリンは、二人の父親のティルニー将軍(General Tilney)から、ヘンリーの実家であるノーサンガー・アビーに招待されるのでした。

所感と好きなシーン

本作は、原作がめちゃくちゃ面白いのですが、マクミランリーダーズ版は登場人物の心理描写が端折られすぎていて、正直物語が理解しづらいと思います。あまりにもったいないので、理解しづらい部分を、原作の内容を紹介して補いながら、解説として別記事にまとめました。たぶんマクミランリーダーズ版だけだと、ほとんどの人がわからないと思うので、ぜひ参考にしていただければ思います!(結構ガッツリ書いてしまいました。笑)

ちなみに、わたしはマクミランリーダーズ版がわからなすぎて、思わず原作(邦訳)に手を出した口ですが、想像以上に面白かったです。久しぶりに読み出したら止まらなくなりました。(笑)

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R. D. ブラックモア(Richard Doddridge Blackmore)

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R. D. ブラックモアの肖像画(画像はWikipediaより)

トーマス・ハーディ、ジェーン・オースティン、そしてこのR. D. ブラックモア(1825-1900)と、イギリス南部・南西部の田園風景を愛した作家が続きます!

ブラックモアはイギリス南東部のバークシャー州(現オックスフォードシャー州)ロングワース出身の、19世紀後半のイギリスを代表する作家です。少年時代にはイギリス南西部のデボン州ティヴァートンの寄宿学校に通い、オックスフォード大学エクセター・カレッジを卒業します。その後法律家を目指しますが、病気で断念します。

彼は少年時代をイギリス南西部の自然豊かなエクスムーア(Exmoor)で過ごし、生涯に渡ってその田園風景を深く愛しました。代表作の『ローナ・ドゥーン(Lorna Doone)』には、その情景が雄大に再現されています。

ブラックモアはイギリスで人気の作家で、『ローナ・ドゥーン』は何度も映画化しているようですが、日本ではあまり知られてなさそうですね。本作の邦訳版は見当たらないし、ブラックモアのWikipediaも日本語版はありません。

でも逆に考えると、日本語訳のない人気作家の作品が楽しめるなんてラッキーですね!^^

Lorna Doone (10,453語)

あらすじ

時代は1673〜1686年。イギリス南西部の自然豊かなエクスムーア(Exmoor)を舞台にした古典的ラブロマンスです。また、1685年に即位したジェームズ2世に対して、その甥のモンマス公兼バクルー公ジェイムズ・スコットが自らの王位継承権を主張して起こした反乱である「モンマスの反乱」が、時代背景として描かれています。

主人公のジョン・リッド(John Ridd)は、小さな村で代々農夫を営む家の息子でした。そこにはドゥーン家(the Doone)というならず者の一族が住み着いており、ジョンは12歳の時に、彼らに父親を殺されてしまいます。復讐を誓うジョンでしたが、ドゥーン家の美しい少女ローナ(Lorna Doone)と出会い、恋に落ちてしまうのでした…。

所感

ドゥーン家の領地で、誰にも見つからないようにこっそり逢瀬を重ねるジョンとローナが、まるで『ロミオとジュリエット』のようです。許されざる恋をしている二人の運命が気になってグイグイ読めてしまいます。

それに、17世紀のイギリスの田園地帯の美しい自然や交通事情(馬!)、そして1685年のジェームズ2世即位に反対する勢力が、貴族だけにとどまらず農民レベルでも各地で反乱を起こしていたという時代背景もわかって、おもしろかったです!

好きなシーン

なんだかんだで、今まで読んできた作品の中にも馬や馬車は頻繁に登場していて、自動車が普及するまでは、馬や馬車が主要な交通手段であったことがうかがえます。しかし、鉄道が登場するのは19世紀です。というわけで、17世紀のイギリスでは、「馬」が長距離を移動するためのほとんど唯一の移動手段だったと言えるでしょう。本作には特に馬車や馬に乗って移動する表現がたくさん出てくるので、馬好きにはたまりませんよ(笑)。

以下は、ローナの正体の核心に迫る重要な場面ですが、そこにもしっかり馬が登場します。(引用箇所だけでは正体はわからないのでネタバレなしです。ご安心を!)

Then I remembered the day after my father’s death — November 29th, 1673. Jan Fry had taken me home from school that day. We had seen a coach near Dulverton. I remembered the people in the fine coach — the lady, her servant and the pretty little girl. And I remembered another thing. That night, I had seen the Doones riding on the moor. One of them had been holding a child on his horse.

*日本語訳(拙訳)*
そのとき僕は、父の死の直後のあの日のことを — 1673年11月29日のことを思い出した。あの日、僕はジャン・フライに連れられて、学校から家路についていた。僕たちは、ダルバートンのそばで、馬車を見かけたんだ。その立派な馬車に乗っていた人たちのことが — ご婦人と、使用人と、かわいらしい少女のことが思い出された。それからさらに記憶が蘇ってきた。その晩、ドゥーン家のやつらが、荒地で馬を走らせていた。そのうちの一人が、馬上で子どもを抱えていたんだ。

R. D. Blackmore, Lorna Doone Macmillan Education, 2005, p.41

また、stableの名詞の用法も初めて知りました。「馬小屋」だったとは…!

以下は、ジョンの叔父のトムが、ジェームズ2世に対する反乱軍に加わるために家を飛び出して行ってしまった後のシーンです。ジョンは彼を止めるために、後を追おうとします。

It was about four o’clock. I put on my clothes and I went to the stable. I got onto my horse and I rode out of the town, towards the sound of the battle.

*日本語訳(拙訳)*
4時ごろだった。僕は着替えて馬小屋に行った。馬にまたがり、町を出て、僕は戦いの喧騒が聞こえる方角へと向かった。

R. D. Blackmore, Lorna Doone Macmillan Education, 2005, p.46

イエス・キリストはベツレヘムの馬屋で誕生しましたが、それもstableなんでしょうか。気になります!(※あとで確認したい案件)

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アンソニー・ホープ(Anthony Hope)

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アンソニー・ホープの写真(画像はWikipediaより)

アンソニー・ホープ(1863-1933)は、イギリスの小説家、劇作家です。数々の作品を残しましたが、『ゼンダ城の虜』(1894)とその続編『ヘンツォ伯爵』(1898)が有名。この二作は、ドイツ近郊にある架空の国家「ルリタニア王国」を舞台に繰り広げられる冒険物語で、ルリタニアン・ロマンスと呼ばれるジャンルを産みました。

ホープは少年時代からかなり良い教育を受けており、オックスフォード大学ベリオール・カレッジで学んだ後、弁護士になっています。また、第一次世界大戦(1914-1918)中のイギリス国家への献身が認められ、ナイトの称号を得て、アンソニー・ホープ卿(Sir Anthony Hope Hawkins)とも呼ばれています。

ゼンダ城の虜 〜The Prisoner of Zenda〜 (9567語)

あらすじ

1893年のヨーロッパの架空の国、ルリタニア王国を舞台にした冒険ラブロマンスです。

イギリス人紳士のルドルフ・ラッセンディル(Rudolf Rassendyll)が、ルリタニア王国(Ruritania)の新王の戴冠式を見学するために、ルリタニア王国に訪れると、首都近郊の街ゼンダで、自分と瓜二つの赤い髪の男性に出会います。その人こそ、近日ルリタニア王国の新王になるルドルフ5世(King Rudolf V)でした。

ルリタニア王国のルドルフ王子と出会ったことで、イギリス人のルドルフも、ルリタニア王国の権力争いに巻き込まれていくことになります・・・。

所感と好きなシーン

全体的には冒険あり、恋愛ロマンスありで面白くて一気に読めるのですが、同時にツッコミどころが多数あって、ツッコミを入れていたら感想が長くなったので別記事にまとめました(笑)。愛情表現と思って読んでいただければ幸いです・・・!

世界中の作家に影響を与え、「ルリタニアン・ロマンス」というジャンルまで産み出した作品なので、オススメですよ^^

ノンフィクション(伝記など)

ここまで古典のリトールド(retold)ものをずっと見てきたのですが、実は「MMR2+」には一冊だけノンフィクション(伝記)が含まれていたんですよね。イギリスの著名人が扱われていたため、本記事に分類しました。

世界中の人々から愛された「ダイアナ妃」です!

Princess Diana (10,115語)

あらすじ

亡くなってから20年経った今も人々の記憶に残る、世界中の人から愛されたダイアナ妃の36年の生涯を書いた伝記です。

ウェールズ公妃ダイアナ(Diana, Princess of Wales, 1961-1997)は、イギリスの第1位王位継承権者ウェールズ公チャールズの最初の妃です。イギリスの名門貴族スペンサー伯爵家の令嬢として生まれ、1981年にチャールズ皇太子と結婚し、ウィリアム王子とヘンリー王子の2児をもうけました。しかし後にチャールズ皇太子とのすれ違いが徐々に顕著になり、1996年に離婚。1997年に、新しい恋人のドディ・アルファイド(Dodi Al-Fayed)とパリで旅行中、自動車事故により亡くなります。

たまたまこの本を読んだあとに、知り合いとお茶していて、ダイアナ妃の話題がでたことがあります。おかげで話題についていけました(笑)。一般教養としてもおすすめ!

所感

わたし自身、ダイアナ妃については記憶もおぼろげだしよく知らなかったのですが、イメージとしては、美しくて上品で愛らしくて、世界中の人に愛を与えて・・・もしもいまご存命なら、きっと変わらず全女性が憧れ、全世界から愛される素敵な方だったと思います。

ですが、この本を読んで、一見輝かしい彼女の人生の裏側の苦悩を知ってだいぶ衝撃を受けました。

チャールズ皇太子との結婚後、慣れない王室生活マスコミの目に晒され続けること、公務で忙殺されるチャールズ皇太子とのすれ違い、チャールズ皇太子の20代の頃からの想い人であるカミラ(Camilla)さんの影が常にちらつくことなどがストレスとなり、ダイアナ妃は過食症で自暴自棄にもなっていたそうです。ダイアナ妃は育ちは良いですが、結婚までは自由に生きてきたのですから、いきなりこれはキツイですよね・・・結婚時まだ20歳ですもんね・・・。

好きなシーン

好きなシーンというか、まあ一番衝撃だったのは、チャールズ皇太子が25歳前後のときに出会った同い年のカミラさんをずっと想い続けていて、ダイアナ妃と結婚後もカミラさんとの関係が続いていて、ダイアナ妃と離婚後にはカミラさんと結婚して30年越しの愛を実らせるっていうところです。

ある意味すごい一途でびっくりしました。

もともと、チャールズ皇太子とダイアナ妃は趣味嗜好が異なっていたようです。その反面、「ポロ」という乗馬競技と「狩り」という共通の趣味を持っていて年齢も近いカミラさんは、チャールズ皇太子とっては心許せる人だったのでしょう。

以下は1995年のBBCの番組にダイアナ妃が出演して、インタビューに答えたときの様子です。ちなみに、引用に出てくる「アンドリュー・モートンの本(Andrew Morton’s book)」は、『ダイアナ妃の真実』のことで、ダイアナ妃とその友人の証言によってチャールズ皇太子を批判する本です。

Diana talked about her relationship with Charles and the Royal Family. She talked about Camilla Parker Bowles. ‘There were three of us in this marriage,’ she said. She talked about Andrew Morton’s book, her bulimia and her relationship with James Hewitt. ‘I want to help people with problems, ‘ she said.

*日本語訳(拙訳)*
ダイアナは、チャールズや王室と、自身との関係について話した。カミラ・パーカー・ボウルズについても語った。「この結婚生活には、三人の人間がいたのです」と、彼女は言った。ダイアナは、アンドリュー・モートンの本や、拒食症、ジェームズ・ヒューイットとの関係についても話した。「わたしは困難に苦しむ人々を助けたいのです」と、彼女は言った。

Anne Collins, Princess Diana, Macmillan Education, 2009, p.37.

普通なら「浮気なんてけしからん!」と言うんですけれども、これはちょっと「しかたなかったのかも・・・」という感じもあるんですよね。

チャールズ皇太子とダイアナ妃が、もともと趣味嗜好が違っていたことや、王になるべく生きてきたチャールズ皇太子と一般人に近い奔放さを持ったダイアナ妃の価値観の違い、お二人の12歳という年齢差ということを考えると、すれ違うことは不可避な気がして。さらには、チャールズ皇太子がただの見境のないプレイボーイというわけではなく、カミラさんに対しては一途なので、チャールズ皇太子を責めきれないな・・・と思ってしまいます。

引用にもありますが、ダイアナ妃もさり気なくジェームズ・ヒューイットという男性と不倫してますしね。まあ、結婚してどうなるかなんて結婚してみないとわからないですし、本当はもっと早く離婚できたらよかったのかもですね・・・。

まとめ:マクミランリーダーズのレベル2(Beginner)読了!

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
また、英語多読を進めている方は、ここまでの英語多読、お疲れ様でした!!

マクミランリーダーズ(Macmillan Readers)のレベル2(Beginner)を紹介するシリーズは、本記事が第4回で、最終回です。イギリス作家のリトールドものを中心に紹介してきましたが、名作ぞろいで、気づいたらすっかりハマってしまいました^^(語りすぎです。笑)

しかも、イギリス編だけで、

8万7392語。(10冊)達成。

さらに、マクミランリーダーズのレベル1とレベル2を合わせると、ここまでで、

23万4283語(50冊)達成です。

50冊も洋書を読んだなんて、間違いなくすごいことです!
おめでとうございます!誇れます!!!! わたし自身も達成感に包まれています・・・!(笑)

みなさんも、すっかり多読が楽しくなってしまったのではないでしょうか。この調子で、英語多読100万語に向けて、無理せず淡々と(笑)、今後も多読を続けていこうと思います^^ 楽しく頑張りましょう!

記念に、マクミランリーダーズ(Macmillan Readers)のレベル2(Beginner)紹介シリーズを列挙しておきます。本記事を合わせて全4回です。 ↓↓↓

それでは、今日も素敵な一日を!

fummy

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