東京のすみっこより愛をこめて。fummyです😊💡
Macmillan Readers(マクミランリーダーズ) レベル2(Beginner)の洋書を詳しく紹介するシリーズの第2弾(#02)です。マクミランリーダーズは、「Graded Readers(GR)」の中でも特に読みやすいため、英語多読におすすめです!
※ちなみに前回の記事(#01)はこちら。
今回から、待ちに待った古典のリトールド(retold)もの(有名な古典文学をGR用に簡単な英語に直したもの)に入ります。本記事は特に、アメリカ作家の作品を集めた「アメリカ編」です。
各作品を紹介するにあたって、あらすじを書くとともに、個人的に好きなシーンの引用と日本語訳(拙訳)もつけています。重要なネタバレはしないように考慮していますので、読む前の参考にしていただくのはもちろん、読んだ後の復習に使っていただければ嬉しいです!
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Macmillan Readers レベル2(Beginner) 〜アメリカ編〜 について

前回(#01)の復習になりますが、Macmillan Readers(マクミランリーダーズ)のレベル2(Beginner)は35冊発行されていて、これらの本は、英語多読協会SSSによって、MMR2とMMR2+の2種類に分類されてます。(参考ページ:SSS推薦・多読用基本洋書のご紹介)
【Macmillan Readers レベル2 全35冊の構成】
※赤字が今回ご紹介する範囲です。
タイプ | 総語数 | YL | ページ数 | 紹介記事 | 冊数 |
---|---|---|---|---|---|
MMR2 (中綴本) |
2000 -3000 |
1.2- 1.4 |
32前後 | 英語多読におすすめ!マクミランリーダーズ(Macmillan Readers) レベル2( Beginner)の洋書を紹介 #01 | 12冊 |
MMR2+ (背表紙あり) |
6000 -10000 |
1.6- 1.8 |
64前後 | 第2弾(#02) アメリカ編 |
9冊 |
やさしい英語で古典文学をたしなむ!マクミランリーダーズ レベル2 (Beginner) の洋書を紹介 #03 〜フランス編〜 | 4冊 | ||||
第4弾(#04) イギリス編(執筆中) |
10冊 |
前回の記事(#01)では、この35冊のうち「MMR2(中綴じ本)」の12冊をご紹介しました。
今回は「MMR2+(背表紙あり)」の23冊を紹介しようと思ったのですが、記事のボリュームがあまりに大きくなったため、さらに作家の出身国ごとに、アメリカ編(9冊)、フランス編(4冊)、イギリス編(10冊)に分類しました。
そのようなわけで、今回はMMR2+アメリカ編の9冊をご紹介します!
一応「この順番で読むと、時代背景も含めて内容が理解しやすい」とわたしが思う順番でご紹介していきます。でも、ここまで来ると、各作品の難易度はほとんど変わらないので、基本的には興味のある作品から読んでいただければよいと思います!
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マーク・トウェイン(Mark Twain)
マーク・トウェイン(本名:Samuel Langhorne Clemens, 1835-1910)は、アメリカ南部のミズーリ州出身の作家です。有名な『トム・ソーヤーの冒険』を書いたのはこの人。
MMR2+では、『トム・ソーヤー』と、その続編の『ハックルベリー・フィンの冒険』の2作品を読むことができます。
トム・ソーヤーの冒険 〜The Adventures of Tom Sawyer〜 (7681語)
あらすじ
1844年のアメリカ南部のミズーリ州、ミシシッピ川のほとりにある架空の町、セント・ピータースバーグを舞台に、11歳の少年トム・ソーヤーの繰り広げる冒険が描かれます。
所感と好きなシーン
このくらいの年の頃って、世界が妙にキラキラしていたなあ・・・って、しみじみ思っちゃいました。だってトムったら、誠実さを示すために、自分の宝物の「ドアノブ(a metal door-handle)」をガールフレンドに贈ったりするんですよ。微笑ましい!!(笑)
ストーリーのネタバレなく、好きなシーンのひとつは以下です。
トムが道端で友達のハックに出会うのですが、彼はなぜか猫の死体(a dead cat)を手に抱えています。「なんでそんなもの持っているの?」とトムが尋ねると、「猫の死体は、手にできた吹き出物(warts)を治すんだよ」とハックは言います。
‘How does a dead cat cure warts?‘ asked Tom.
‘A bad man dies,’ Huck replied. ‘People take him to the graveyard. They bury him in the ground. That night, you take the dead cat to the graveyard. At midnight, ghosts come. They take away the dead man. The dead man has to follow the ghosts. The cat follows the dead man. And the warts follow the cat. So the cat cures your warts. It’s easy!‘*日本語訳(拙訳)*
「どうして猫の死体で吹き出物が治るの?」とトムは尋ねました。
「悪人が死んだら、」とハックが答えました。「そいつは墓地に運ばれて、地面に埋められるだろ。その夜に、猫の死体を墓地にもって行くんだ。真夜中に幽霊がやってくる。やつらは死んだ悪人を連れていっちまう。死人は幽霊についていかなきゃならないんだ。猫は死人について行く。そして、吹き出物は猫について行く。だから、猫が吹き出物を治すってわけさ。簡単だよ!」ーMark Twain, The Adventures of Tom Sawyer
Macmillan Education, 2007, p.19
「簡単だよ」じゃない! 怖いわ!!(笑)
このお話は、ミズーリ州の民間伝承だったりするんでしょうか。今度調べてみようと思います。
ハックルベリー・フィンの冒険 〜Adventures of Huckleberry Finn〜 (8621語)
あらすじ
『トム・ソーヤーの冒険』の続編です。『トム・ソーヤー』から2年後の1846年、ミズーリ州セント・ピータースバーグが舞台です。
今回は『トム・ソーヤー』でおなじみの、トムの友達ハック(Huck)が主人公。
前作の最後にハックが手に入れた大金を狙って、ハックの父親がセント・ピータースバーグに帰ってきます。「お金のために、お父さんに殺されるかもしれない・・・」と感じたハックは、セント・ピータースバーグから脱出することを決意。途中で出会った逃亡奴隷の黒人ジム(Jim)とともに、自由の土地を目指して、いかだでミシシッピ川を南下していきます。
所感と好きなシーン
これは本当に読むべき一冊です。あまりに感動したので、思わず別の記事で語ってしまいました(笑)
南北戦争以前のアメリカ南部の奴隷制の問題を背景にした、白人の少年と黒人奴隷の人種を超えた絆がメインテーマで、非常にドラマティック。ミシシッピ川南下中に次から次に起こる事件、白人であるハックの葛藤、最後のオチ・・・と、展開も盛りだくさん。100万語達成したら原作読みます!
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ルイーザ・メイ・オルコット(Louisa May Alcott)
ルイーザ・メイ・オルコット(1832-1888)は、アメリカ北東部のペンシルベニア州出身の作家です。代表作は『若草物語(Little Women)』。この物語の4人姉妹は、いまも世界中から愛されています。
MMR2+では、『若草物語』とその続編の『続・若草物語(Good Wives)』を読むことができます!
『若草物語』は、アメリカ南北戦争(1861-1865)を時代背景とした作品で、『トム・ソーヤー』とも時代が近いです。しかし『トム・ソーヤー』が南部の大自然が舞台だったのに対し、こちらは北東部のマサチューセッツ州の少女たちの物語であるため、まったく雰囲気が異なります。お楽しみに!
若草物語 〜Little Women〜 (7092語)
あらすじ
1862年、南北戦争まっただ中。マサチューセッツ州の小さな町に住む、マーチ家の4人姉妹メグ(Meg, 16歳)、ジョー(Jo, 15歳)、ベス(Beth, 13歳)、エイミー(Amy, 12歳)の物語です。お父さんは北軍の従軍牧師として出征してしまい、残されたお母さん(Marmee)と4人姉妹は、貧しくも慎ましく、お互いを思いやり、助け合って強く生きています。
ちなみに、『若草物語』は作者の半自伝的な物語で、4人姉妹はオルコット家の4人姉妹をモデルにしています。特にジョーはルイーザ・メイ・オルコット自身をモデルにしたキャラクターです。
所感と好きなシーン
『若草物語』は邦訳版を何回も読んだし、映画も見ましたが、何度読んでもマーチ家の高潔な魂に心打たれます。マーチ家の4人姉妹の日常をみていく中で、愛や、本当に大切なものに気づかされていく物語です。
登場人物はみんな好きなのですが、特にジョーとベスが大好き。ベスは本当に健気で愛おしいです。天使です。13歳の子がキラキラしながらこんなことを言うから、家族みんながポッと温かい気持ちになるんですよ。こんなこと娘に言われたら、お父さんとお母さんは泣いちゃうから!(笑)
Then Beth spoke. ‘Yes, we are poor,’ she said. ‘But we are lucky too. We have Father and Mother and we have each other.‘
*日本語訳(拙訳)*
すると、ベスが口を開いた。「ええ、私たちは貧しいわ」と彼女は言った。「でも、私たちはラッキーなの。お父さんとお母さんがいて、お互いがいるんですもの」ーLouisa May Alcott, Little Women
, Macmillan Education, 2005, p.10
一方、ジョーにはいろいろ共感してしまうんですよね。ジョーは物語を書くことが好き、一人でいることが好きです。穏やかな姉妹の中ではちょっと異質で、わんぱくで激昂しやすくて。思いやりがあるけれど、時々素直になれない不器用な子です。
以下は、ジョーとエイミーがケンカをしたことが原因で、エイミーの命が危険にさらされ、ジョーが猛省するシーンです。それにしても、こうやって娘が心から助けを求めているときに、励まして導くことができるマーチ夫人。本当に偉大な人だなあと思います。人格者だ・・・。
‘I was angry with Amy,’ said Jo. ‘… (An omission) … But now I am very sorry. Sometimes, I become angry too quickly. What shall I do, Marmee? Please help me.’
‘Don’t cry, Jo,’ said Mrs March. ‘Remember this day. You won’t become angry again.‘
‘I will remember,’ said Jo.*日本語訳(拙訳)*
「私、エイミーにイラついてたわ」とジョーは言った。「… (略) … でも今は本当に申し訳ないと思ってる。時々すぐにカッとなってしまうの。私どうしたらいいの、お母さん。助けて。」
「泣かないで、ジョー」とマーチ夫人は言った。「この日を忘れないことよ。あなたはもう二度と怒ったりしないわ」
「私、忘れないわ」とジョーは言った。ーLouisa May Alcott, Little Women
, Macmillan Education, 2005, p.31
そういえば、タイトルの”Little Women”は、お父さんが娘たちに宛てた言葉なんですね。「私の4人の小さな婦人たちへ(To my four little women)」という書き出しの手紙が登場します(p.11)。
お父さんが娘たちを、小さいけれどもただの少女ではなく、立派な一人の女性として扱っているのがうかがえます。うーん、お父さんまでも!素敵な家族!
続・若草物語 〜Good Wives〜 (9237語)
あらすじ
『若草物語』から5年後、1866〜1877年のマーチ姉妹たちのその後の人生が描かれます。素敵な大人の女性に育った4人姉妹たち。メグ(Meg)は幸せな結婚生活を送り、ジョー(Jo)は作家になることを目指してニューヨークに旅立ちます。エイミー(Amy)は画家になることを夢見てヨーロッパ旅行に赴き、ベス(Beth)は平和で幸せな人生を望んでいます。
所感と好きなシーン
前作では10代の少女であった4人姉妹たちはすっかり大人になりました。そのため、姉妹たちはそれぞれ、時には切なく時にはとても幸せな恋愛をします。マーチ家のあるマサチューセッツ州の小さな町を離れることもあります。家庭を持つこともあります。そして、本作では悲しい事件も起こります。しかし、4人姉妹の絆と人を思いやる心は変わらず健在で、お互いを心から愛して助け合い、苦難を乗り越える姿に、やはり心が癒されます。
印象的なシーンは前作も今作も山のようにあるのですが、わたしは相変わらずジョーとベスが大好きなので、ジョーとベスが二人で海辺の町に小旅行に出かけ、二人で語らうシーンを引用することにします。
At the moment, a white bird flow over their heads. The two girls watched it. It was beautiful. The Beth saw a little brown bird walking on the sand. This little bird was not beautiful, but it was sweet and friendly.
‘You’re the white bird, Jo‘ said Beth. ‘You’re strong and beautiful and you’re not afraid of anything. But I’m the little brown bird. I haven’t done many things in my life, but I’ve been happy. Meg and Amy always wanted fine clothes. I never wanted fine clothes. You wanted an exciting life, Jo. I never wanted that. You all wanted to leave home. You all wanted to have adventures. But I only wanted to stay at home with Marmee and Father.’*日本語訳(拙訳)*
そのとき、白い鳥が二人の頭上を飛んでいた。2人の少女たちは、それを見つめた。とてもきれいだった。ベスは、小さな茶色の鳥が砂の上を歩いているのを見た。この小さな鳥は、きれいではなかったけれど、かわいらしくて愛嬌があった。
「あなたはあの白い鳥よ、ジョー」とベスは言った。「あなたは強くて美しい、そして何も恐れない。でも、私は小さな茶色い鳥。私はこれまで生きてきて、たくさんのことをしたわけではないけれど、ずっと幸せだったわ。メグとエイミーはいつも素敵なお洋服を欲しがった。私は素敵なお洋服を欲しいと思ったことはなかった。あなたはいつもワクワクするような人生を求めていたわね、ジョー。私はそんなものを求めたことはなかった。あなたたちはみんな、家を出ることを望んでいたわ。みんなして、冒険を求めていた。でも私はただ、お母さんとお父さんと、お家で過ごしていたかっただけ。」ーLouisa May Alcott, Good Wives
, Macmillan Education, 2005, pp.46-47
活発で冒険が大好きなジョーと、おとなしくて引っ込み思案なベス。大人になっても子供っぽくて感情的なジョーと、いつも穏やかで周囲の大切な人たちに心からの愛の言葉をかけるベス。正反対な二人だからこそお互いを尊敬していて、本当にお互いが大好きなんですよね。この二人が大好きです…!!
それから、ジョーに恋のエピソードがあるのですが、プロポーズの時のセリフがすごく素敵なんですよね。「僕が君にあげられるのは、僕の心と、空っぽの両手だけだ(I can only give you my heart and my empty hands)(p.59)」って!こんなセリフ言われてみたい!!
そして「あなたの両手は、もう空っぽじゃないわ(Your hands aren’t empty now, my dear)(p.59)」って返したい(笑)
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ヘンリー・ジェイムズ(Henry James)
ヘンリー・ジェイムズ(1843-1916)は、ニューヨーク市の非常に裕福な家庭出身で、父も兄も哲学者。本人もアメリカだけでなく、イギリス、ヨーロッパ各国で教育を受けた秀才です。のちにイギリス人になってしまったくらいイギリスが大好きな英米を代表する作家です。
代表作は『ねじの回転』、『ある婦人の肖像』、『デイジー・ミラー』など。わたしは今回初めてジェイムズの作品を読んだのですが、彼の作品は邦訳もたくさんあるし、映画化も何回もされているんですね。複雑な人間心理を、リアルに精緻に描くのが特徴とのことです。
『若草物語』と時代が近いのですが、今回とりあげる『ワシントン・スクエア』は、タイトルが示すとおり、ニューヨーク市マンハッタンの高級住宅街。ブルジョワ社会の生活が垣間みえます!
ワシントン・スクエア 〜Washington Square〜 (8004語)
あらすじ
1847〜1866年のニューヨーク市の高級住宅街、ワシントン・スクエアの上流階級の物語。
キャサリン・スローパー(Catherine Sloper)は平凡な容姿で賢くもないけれど、心が優しい20代の女性です。医者である父と叔母と一緒に、ワシントン・スクエアにある邸宅に住んでいます。
キャサリンは、モリス・タウンゼント(Morris Townsend)という、貧しいけれどハンサムな青年と出会って恋に落ち、婚約します。しかし父親は「お金目当て」だと婚約に猛反対。モリスと結婚するなら遺産はすべて寄付すると言い渡します。それを聞いたモリスは、お金持ちになったら戻ってくると言い、キャサリンのもとを去って行きます。モリスはお金目当てでキャサリンと結婚しようとしたのでしょうか?本当に戻ってくるのでしょうか?
所感と好きなシーン
モリスの真意が気になって、一気に読んでしまいました。そして「お父さんは何がしたいの?」と終始イラついていました(笑)。娘を心配しているのか、自分の思い通りにならないことが嫌なのか。
結局父は娘を完全に下に見ていたんでしょうね。美しく聡明な母に似ておらず「平凡な容姿で賢くもないキャサリン」に失望していたために、こんな容姿の娘と結婚したい男なんていない、愚かな娘が男の本心を見抜けるわけがないと。
でも実際は愚かなのは父の方で、キャサリンは本当に気丈で、心の優しい子だと感じました。だってこの父親は、ことあるごとに娘をバカにしたり嫌味を言ってきますが、キャサリンはそれでもお父さんを慕って従います。いつも父に歩み寄ろうとします。キャサリンの包容力によって親子関係が保たれていたと思います。
‘I was afraid, Father,’ Catherine replied. ‘You don’t like Morris. You told me that. But I want you to like him. You don’t know him, and I do know him!’
‘No, Catherine,’ the doctor said. ‘No. You don’t know Mr Townsend. He is a very clever young man. You are kind and honest. You do not understand him. He doesn’t love you. He loves your money. He will spend it very quickly. He has spent all his own money and now he wants to spend your money too!’*日本語訳(拙訳)*
「私、怖かったんです、お父さま」とキャサリンは答えた。「お父さまはモリスのことが嫌いだと、そうおっしゃってたから。でも私、お父さまに彼を好きになっていただきたいんです。お父さまはモリスのことをご存じないのよ。でも私は、彼のことをわかっていますから!」
「いいや、キャサリン」と医者は言った。「ちがう。お前はタウンゼント君のことをわかっちゃいない。あいつは非常に賢い若者だ。お前は心優しくて誠実な娘だ。お前にはやつのことは理解できない。やつはお前のことを愛してなんかいない。お前の金を愛しているんだ。やつはお前の金をさっさと使い果たしてしまうだろう。あいつはすでに自分の金を使い果たしてしまっているから、今度はお前の金を使おうっていう魂胆だぞ」ーHenry James, Washington Square
, Macmillan Education, 2005, p.26
いろんな解釈があると思いますが、「モリスは最初はお金目当てでキャサリンに近づいたけれど、キャサリンの純真さや上品さ、自分を心から慕うさまに、情が芽生えて本当に好きになった」のだと、個人的には信じております。
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オー・ヘンリー(O. Henry)
オー・ヘンリー(本名:William Sydney Porter、1862〜1910)は、19世紀末から20世紀初頭に活躍した、アメリカの代表的な小説家です。『最後の一葉(The Last Leaf)』が有名。
彼の書く短編はどれもオチが秀逸で、結末にハッとさせられます。人を感動させる天才だと思います。しかし今回、彼の経歴を初めて知ってビックリ。素行が悪いッッ(笑)。
勤め先の銀行のお金を横領した疑いで逮捕されそうになったために中南米に逃亡したり、結局3年ほど投獄されたり。ついでに相当の浪費家で飲んだくれだったとのこと。
ペンネームの由来は明かされておらず、諸説あります。ただ、獄中から作品を発表するのにペンネームの方が都合がよかったという事実はあるようですね(Wikipediaより)。
ちなみに『最後の一葉』の舞台は、20世紀初頭のニューヨーク市ワシントン・スクエアの一画です。ジェイムズの『ワシントン・スクエア』から50年が経っているからか、だいぶ現代チックな印象を受けます。他短編には車も登場しますしね。『ワシントン・スクエア』では馬車(carriage)だったのに・・・。
最後の一葉 他数編 〜The Last Leaf and Other Stories〜 (7418語)
あらすじ
代表作の『最後の一葉』の他、四つの短編が収録されています。
下記にあらすじを記載しますが、『最後の一葉』以外の日本語タイトルは拙訳です。
- 『The Good Burglar(善良な盗人)』:金庫破りの疑いが晴れて出所したジミー。新天地アーカンソー州エルモアで、有力な銀行家の娘アナベルに恋に落ちます。
- 『The Last Leaf(最後の一葉)』:ニューヨーク市のアパートで共同生活を始めた二人の絵描きの少女、スーとジョンジー。しかしその冬、ジョンジーは肺炎にかかり、生きる希望を失います。
- 『A Lesson in Love(愛のおけいこ)』:ジョーとデリアはニューヨーク市に住む、芸術家を志す夫婦。貧しくても絵とピアノとお互いがいることに満足な二人でしたが、ついに生活資金が底をつきます。
- 『The Jeweller’s Wife(宝石商の妻)』:テキサス州ヒューストンで探偵を始めたキーリング氏の最初の仕事は、宝石商の妻からの依頼で、夫の浮気現場を押さえることでした。
- 『The Car is Waiting(車が待っている)』:ニューヨーク市の公園に、いつも決まった時間に現れる優雅で美しい女性。ある晩、男が彼女に声をかけ、その秘密にせまります。
所感と好きなシーン
ひとつひとつの短編は10ページ程度なのに、どれもオチが素晴らしく、読後に余韻が残ります。そして、やっぱり『最後の一葉』はこれまで何度も読んだのに泣いてしまいます・・・。なんなのこの美しい話・・・。
というわけで『最後の一葉』より引用します。
肺炎にかかって日に日に弱っていくジョンジー(Johnsy)が、生きる気力を失い、窓の外に見えるツタの葉に自らの運命を重ねて、友人のスー(Sue)に自分の死期を告げるシーンです。
‘There are only five leaves on the vine now,’ said Johnsy. ‘The last leaf will fall soon and then I’ll die. Didn’t the doctor tell you about the leaves?’
*日本語訳(拙訳)*
「ツタにはもう、葉が5枚あるだけね」とジョンジーは言った。「最後の葉がもうすぐ落ちるわ。そのときに私は死ぬの。お医者さまは葉っぱのこと、言っていなかったかしら?」ーO. Henry, The Last Leaf and Other Stories
, Macmillan Education, 2006, p.26
ちなみに肺炎は”pneumonia(ニューモニア)”。19世紀末のニューヨークでは、多くの人が肺炎にかかり、亡くなったそうです。そんなに恐ろしい病気だったとは・・・。
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ジェイムズ・フェニモア・クーパー(James Fenimore Cooper)
ジェイムズ・フェニモア・クーパー(1789-1851)は、19世紀のアメリカの作家です。
アメリカ北東部のニュージャージー州出身で、アメリカ北部に広がる大自然と、その中に息づく白人とインディアンの友情を描きます。
彼の名前を知らしめた代表作『モヒカン族の最後(The Last of the Mohicans)』は、白人の斥候ホークアイを主人公とする5部作の第2作目。この5部作は『レザーストッキング物語』と呼ばれていて、MMR2+では『モヒカン族の最後』を含めた2作品を読むことができます!
- シカ狩り人(The Deerslayer)
- モヒカン族の最後(The Last of the Mohicans) ←★MMR2+で読める!
- 道を拓く者(The Pathfinder) ←★MMR2+で読める!
- 開拓者(The Pioneers)
- 大平原(The Prairie)
モヒカン族の最後 〜The Last of the Mohicans〜 (6514語)
あらすじ
舞台は1757年、独立(1776)前夜の植民地時代のアメリカ北東部。そこでは、イギリス軍とフランスが領土を争い、激しい戦闘を繰り返していました。
その地に古くから住むインディアンたちは、部族ごとに各勢力に組し、ヒューロン族はフランス軍、モホーク族とモヒカン族はイギリス軍に加勢していました。
白人の斥候ホークアイ(Hawk-eye)と、たった二人残された「最後のモヒカン族」チンガチュグック(Chingachgook)とその息子ウンカス(Uncas)は、固い絆で結ばれた友人同士です。
3人は、ヒューロン族のマグア(Magua)に命を狙われた、イギリス軍のマンロウ(Munro)将軍の二人の娘たち、コーラ(Cora)とアリス(Alice)を助けます。
所感と好きなシーン
CDが本領を発揮している作品です。だって、インディアンたちの名前が全然読めないんですもの(笑)。以下に本文引用と拙訳を載せていますが、CDの音と本の発音記号を参考にして、なるべくCDの音に近づけるようにインディアンの名前を訳しました。
邦題は『モヒカン族の最後』なのですが、タイトルの”the last of the Mohicans“という言葉は、作中で何度か以下のような使い方で登場するので、意味合い的には「最後のモヒカン族」とするのが正しいと思います。
‘Where are the Mohicans now?’ asked Hawk-eye.
‘Where are the flowers of those summers?’ said Chingachgook. ‘Gone. All dead. After my death, Uncas will be the last of the Mohicans.’*日本語訳(拙訳)*
「モヒカン族たちは、今はどこにいるんだい?」とホークアイは尋ねた。
「あの夏の花たちが、どこにいるのかだって?」と、チンガチュグックは言った。「いなくなってしまった。みんな死んだよ。私が死んだ後は、ウンカスが最後のモヒカン族になるだろう」ーJames Fenimore Cooper, The Last of Mohicans
, Macmillan Education, 2005, p.13
それにしても、”the flowers of those summers”といい、インディアンたちが何気なく発する言葉の表現が良いんですよね。自然とともに生きてきた人たちの発想だなあと。
以下はデラウェア族の最高齢の族長タメナンド(Tamenund)が、子孫たちに伝えた言葉です。インディアンは肌の色が赤いので、”the red man(赤き人々)”と表現されています。
‘The time of the red man has gone. We fought for our land. But now there are many white men — as many as the leaves on the trees. I have lived too long. I have seen the last of the Mohicans.’
*日本語訳(拙訳)*
「赤き人々の時代は過ぎ去った。われわれは、我らが大地を守るために戦った。しかし、そこにはもはや — 木に生い茂る葉のごとく数多の、白き人々がいるのだ。私はあまりに長く生きた。最後のモヒカン族に相まみえたのだから。」ーJames Fenimore Cooper, The Last of Mohicans
, Macmillan Education, 2005, p.62
ちなみに、イギリス人のマンロウ将軍の娘のコーラとアリス。
コーラは黒髪で黒い瞳、アリスは金髪碧眼という描写だったので、「姉妹なのになんでそんなに見た目が違うん?」と疑問に思っていたのですが、GRには載せきれていない設定が原作にはあるようです。まあ、母親が違うのですが…。原作が読みたくなってしまった…。(Wikipediaで知ってしまいました。ネタバレ注意 > < )
道を拓く者 〜Hawk-eye, the Pathfinder〜 (9237語)
あらすじ
舞台は『モヒカン族の最後』から3ヶ月後の1757年、アメリカ北東部のオンタリオ湖周辺です。そこでは相変わらず、イギリス軍とフランスが領土を争い、インディアンたちがそれぞれの勢力に加勢し、激しい戦闘を繰り返していました。
白人の斥候ホークアイ(Hawk-eye)、その友であるモヒカン族のチンガチュグック(Chingachgook)、北米の湖と川に精通した白人の若い船長ジャスパー・ウェスタン(Jasper Western)は、イギリスの偵察部隊に随行し、オンタリオ湖の東岸にあるサウザンドアイランズに隠された小要塞に向かいます。
所感と好きなシーン
前作からおなじみの白人の斥候ホークアイは、様々な名前をもっていて、今回はイギリス軍に「道を拓く者(Pathfinder)」の愛称で呼ばれています。道を「拓く」者…! かっこよすぎる…!
お話の方も、前作の『モヒカン族の最後』がかなり面白かったので期待値が上がっていましたが、それを裏切らない冒険が繰り広げられます。ほぼ海のような広大なオンタリオ湖の航海、フランス軍・インディアンとの交戦、ダナム(Dunham)軍曹の娘メイベル(Mabel)をめぐる3人の男たちの恋愛闘争などなど、内容がボリュームアップしています。
個人的に好きなシーンは以下です。狙撃の名手であるホークアイが、愛するメイベルにその半端ない腕前を披露します。「一石二鳥」を素でやってのける、できる男パスファインダー(※ホークアイ)。なぜ彼が悲しげな表情をしているのか、何をメイベルに伝えたかったのかは、ぜひ本編でお確かめください。
For a second, one of the birds was between the scout’s gun and the other bird. The Pathfinder fired his gun once, but both birds fell into the lake.
The Pathfinder had killed the two birds with one bullet! He smiled sadly.
‘Goodbye Mabel,’ he said and he walked away.
He was telling the young woman something. He was not using words, he was using his gun … (An omission) …*日本語訳(拙訳)*
ほどなくして一羽が、その斥候のかまえる銃と、もう一羽との間に入った。パスファインダーは、一度発砲した。しかし鳥は二羽とも湖に落ちた。
パスファインダーは、一発の弾丸で二羽の鳥を撃ち取ったのだ!彼は悲しげに微笑んだ。
「さようなら、メイベル」と彼は言い、歩き去っていった。
彼はその若い婦人に伝えたのだ。言葉は用いずに、銃を使って。 … (略) …ーJames Fenimore Cooper, Hawk-eye, the Pathfinder
, Macmillan Education, 2005, p.34
今回登場するインディアンは、タスカローラ(Tuscarora)族のアローヘッド(Arrowhead, 矢じり)と、その妻モーニング・ジュー(Morning Dew, 朝露)。幸い英語の愛称で呼ばれていたため、CDがなくてもなんとか発音がわかりました。
どちらかというと、軍人たちの階級がたくさん出てきて難しかったです。
大雑把に偉い順にまとめてみました。「どの人がどの人よりも上の立場か」というのを把握しておけばよいと思います。
- Major Lundie(ランディー少佐)
オンタリオ湖のほとりのイギリス軍拠点、オスウィーゴ要塞の最高指揮官。 - Lieutenant Mui(ムーイ中尉)
メイベルを好きな三人の男の一人。50代で三回の婚歴あり。 - Sergeant Dunham(ダナム軍曹)
メイベルのお父さん。サウザンドアイランズの偵察部隊で総指揮をとる予定。 - Corporal McNab(マクナブ伍長)
サウザンドアイランズの偵察部隊12人のうちの一人。夫人も島に同行。
こんな上下関係だから、最初にムーイ中尉が「自分もサウザンドアイランズに行きたい」と申し出たときに、ランディー少佐が「行かせられない」と難色を示したんですね。
サウザンドアイランズでは、ダナム軍曹が部隊の指揮をとることに決まっていたので、軍曹よりも立場が偉いムーイ中尉が同行してしまったら、どう考えても指揮系統が乱れます。 大人なんだから自分の立場を考えなさいよ!ってかんじです。(→ムーイ中尉)
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ハーマン・メルヴィル(Herman Melville)
ハーマン・メルヴィル(1819-1891)は、ニューヨーク出身の作家で、代表作は『白鯨』です。
1840年以降、捕鯨船アクシュネット号の乗組員となって太平洋を航海した経験や、1843年にアメリカ海軍ユナイテッド・ステーツ号の水兵に採用された経験を生かして、海洋小説を多く手がけています。
今回紹介する『ビリー・バッド(Billy Budd)』も船上の物語で、メルヴィルの最後の作品です。船の用語が多いので、MMR2+のなかでは比較的難しく感じました。『道を拓く者(the Pathfinder)』と共通する単語が結構出てくるので、『道を拓く者』を先に読んでおくのがオススメです!
ビリー・バッド 〜Billy Budd〜 (7424語)
あらすじ
1797年、戦争中のイギリスとフランスは一触即発状態。海上は両者の軍艦が行き来していました。主人公はイギリス軍艦インドミタブル(不屈)号の船員、ビリー・バッド(Billy Budd)。彼は、ハンサムでいつも明るく、よく働くため、誰からも好かれていました。しかし、ジョン・クラガート(John Claggart)衛兵長だけはなぜかビリーを目の敵にしており、ビリーを陥れようと画策していたのでした。
所感と好きなシーン
18世紀末のフランスとの戦時下のこの時代。まず押さえておかなければならないのは、イギリス海軍は常に労働力を必要としており、船員を調達するために、町や、ときには海を航行する商船から、乗組員を強制的に徴兵していたということ。ほぼ海賊行為ですね。
強制徴兵された船員たち(impressed men)は、低賃金・劣悪な環境で働かされることが多く、しかも軍艦なので戦闘に巻き込まれて命を落としたり重傷を負ったりすることも多かったようです。徴兵されたっきり家族に二度と会えなかったということも日常的にあったそう。そんなわけなので、強制徴兵された船員たちは、しばしばストライキなどの反逆行為(mutiny)を行いました。戦時下での内部からの反抗は、軍人たちにとっては深刻な脅威となったので、反逆行為は軍人たちにとても恐れられるとともに、ひとたび発生しようものなら、当事者は厳罰に処せられました。
クラガート徴兵長(master-at-arms)が本当に、ザ・悪人、ザ・部下いびりです。意味わからないですけど、こういう悪人いるんですよね。いつの時代も上司は選べないのか・・・。
Wicked people hate everybody. They hate themselves. But most of all, they hate good people. They hate their goodness. The sailors on the warship liked Billy Budd. He was handsome and happy. But most of all, he was good. Why does Claggart hate Billy Budd? He hated Billy’s goodness. There was no other reason for his hate.
*日本語訳(拙訳)*
悪人はあらゆる人間を憎むものだ。彼らは自らをも憎んでいる。しかし何よりも、善良な人々を憎んでいる。彼らの善良さを憎んでいるのだ。軍艦の船員たちは、ビリー・バッドが好きだった。彼はハンサムだし、楽しい人物だったからだ。しかし何よりも、彼は善良だった。なぜクラガートはビリー・バッドを憎むのだろうか。彼は、ビリーの善良さを憎んだのだ。彼の憎しみに、それ以上の理由はなかった。ーHerman Melville, Billy Budd
, Macmillan Education, 2005, p.28
最後まで読むと理不尽さにやりきれない思いです。でも、戦時下だからこそ、秩序を重んじなければならないという時代背景がよく理解できたので、こういう事件って実際にそれなりの頻度であったんだろうなと思いました。船長たちがいい人たちだったのが、せめてもの救いです。
というか、この物語を読んで気づいたのですが、わたし今まで生きてきてずっと「マスト」という言葉を勘違いしていました。マスト=帆だと思ってました … 。今まで、「マストを張る」とか使ってた気がします… うわあああ(ショック)
正確にはmast=帆柱、sail=帆です。「マストに帆を張る」が正しいです。(まあ、勘違いしてたの、わたしだけですよね… 。ショックだな… 。)
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まとめ

マクミランリーダーズ(Macmillan Readers)のレベル2(Beginner)から、「MMR2+」のアメリカ作家の作品9冊をご紹介してきました。
やっぱり古典のリトールド(retold)ものに入って、一気におもしろくなりました!
それに、今回の9冊だけでも合計7万925語になるので、読み応えも達成感もありますよね。
ちなみに、マクミランリーダーズ(Macmillan Readers)のレベル2(Beginner)紹介シリーズはこちらです。全4回の予定で、シリーズ第4弾「イギリス編(10冊)」は執筆中です。
ここから先も楽しみですね。
多読、楽しんでいきましょう!
それでは、今日も素敵な一日を!
fummy